改訂新版 世界大百科事典 「ソグド文献」の意味・わかりやすい解説
ソグド文献 (ソグドぶんけん)
中世イラン語のソグド語で書かれた文献。宗教文献と世俗文献とに大別できる。宗教文献中,残された量において最大のものは仏典類である。そのほとんどは敦煌の千仏洞の一つから発見された。一方,トゥルファン(吐魯番)からはマニ教やキリスト教の経典類も発見されている。世俗文献中,敦煌の西方で発見された書簡類はソグド文献における最も早い時代のもので,ヘニングW.B.Henningはこれを4世紀初頭に書かれたと推定している。サマルカンド西方のムグ山からは紙のほかに皮や木などにも書かれたいわゆるムグ文書と呼ばれる経済・法律文書が発見されている。また,チベット西端のラダックやモンゴル高原では碑文が発見されている。ラダック碑文は9世紀中葉に作られたと考えられているが,ソグド文献中最も新しい時代に所属する。マニ教文献の多くはシリア文字を改良して作られたマニ文字で,キリスト教文献はエストランゲロ・シリア文字でそれぞれ表記されているが,残りはすべてソグド文字を使用している。
執筆者:庄垣内 正弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報