日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソグド語」の意味・わかりやすい解説
ソグド語
そぐどご
7世紀から8世紀にかけて、中央アジアの有力な国際共通語として、東西交渉に重要な役割を果たした言語。東イラン語群のサカ・スキタイ語系に属する死語である。トルキスタンや敦煌(とんこう)から出土した、ソグド文字で書かれた仏教・マニ教・キリスト教(景教)に関する文献や、ペンジケントの東にあるムグ山で発見されたムグ文書が、この言語の研究を進めた。アラム文字からつくられたソグド文字の字形には変種も多く、マニ教文献の草書体字形や、ムグ文書のサマルカンド字形などが知られる。ソグド語は、一般に母音を十分に表記しないため、母音の決定は困難であり、文中にアラム語が混入するという特徴もある。タジク(タジキスタン)共和国に現住するヤグノーブ人は、ソグド人の後裔(こうえい)といわれるが、古代ソグド語と現代ヤグノーブ語の関係は、いまだ解明されていない。
[西田龍雄]