日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソーンダイク博士」の意味・わかりやすい解説
ソーンダイク博士
そーんだいくはかせ
Dr.Thorndyke
イギリスの推理作家R・A・フリーマンの創作した科学者名探偵。その容姿は古今の探偵のなかで最高にハンサムとされ、その視力と聴力には人並み外れたものがある。推理小説上の名探偵が多かれ少なかれ直感や人間観察を通して推理を行うなかにあって、そのような要素を排し、物的手掛りを科学的に分析して推理を組み立ててゆく異色性によって、シャーロック・ホームズの好敵手との世評が高い。いつも鑑識道具の入った緑のケースを持ち歩くジョン・イブリン・ソーンダイク博士は、法医学の教授にして弁護士でもあり、ロンドンのキングス・ベンチ・ウォーク五Aに住んで、自宅には実験室があり、何人もの研究員を擁している。
長編への初登場は『赤い拇指紋(ぼしもん)』(1907)で、短編での登場はその翌1908年『ピアスンズ・マガジン』のクリスマス号に載った『青いスパンコール』からである。短編集『歌う白骨』(1912)収載の諸作品でもその敏腕ぶりを発揮している。
[梶 龍雄]
『大久保康雄訳『ソーンダイク博士の事件簿』全二冊(創元推理文庫)』▽『吉野美恵子訳『赤い拇指紋』(創元推理文庫)』