日本大百科全書(ニッポニカ) 「ぞうきん」の意味・わかりやすい解説
ぞうきん
ぞうきん / 雑巾
ふき掃除に使う布。室町後期、板敷きから畳敷きへと住生活が変化したため、掃除も手でふく形に変わってきた。そのとき使用されたものが、浄巾(じょうきん)とよばれる手拭(てぬぐい)であったが、手足などをふく手拭と区別するため、ふき掃除用を浄巾としたようである。これがなまって雑巾となり、江戸時代中ごろから木綿の古裂(ふるぎれ)を数枚重ねて刺子にしたものが登場し、以来ぞうきんの代表となった。
現在では、ある程度使用した浴用タオルでつくったものが、吸水性、洗濯性、乾燥性、衛生などの点から最適とされている。また綿繊維をざっくり織った専用ぞうきんも市販されている。いずれも水ぶき用に使う。からぶき用には、吸水性の少ない合成繊維の端裂や、毛織物の古着を利用し、ほこりをとる。艶(つや)出し用には、木綿袋に糠(ぬか)やおからを入れた糠ぞうきんを使う。
ほこりとりと艶出しの両方の効果を兼ねたものに化学ぞうきんがある。適度の油剤、界面活性剤、抗菌剤、防カビ剤をぞうきんにしみ込ませてある。表面を軽くなでるだけで、ほこりが吸い取られ、界面活性剤の働きで包み込まれる。他に転移して汚れることはなく、衛生的で、手軽なぞうきんである。ただ、強くこすって使用すると、油剤が付着し、かえって汚れがつきやすくなる。レンタル式のものと、市販のスプレー式化学ぞうきん用溶剤でつくるものとがある。つくるには、タオルぞうきんや、古下着類などにまんべんなくスプレーし、一晩ビニル袋に入れて、十分にしみ込ませてから使用する。
[阿部絢子]