(読み)ゾウ

デジタル大辞泉 「造」の意味・読み・例文・類語

ぞう【造】[漢字項目]

[音]ゾウ(ザウ)(呉) [訓]つくる みやつこ
学習漢字]5年
物をこしらえる。つくる。「造営造花造船造本改造偽造急造建造構造醸造人造製造創造鋳造捏造ねつぞう捏造でつぞう模造木造
なす。行う。「造反
ある所まで行きつく。至る。「造詣ぞうけい
急であわただしい。「造次
[名のり]いたる・なり
[難読]国造くにのみやつこ

みやつこ【造】

《「御家つ子」の意か。「みやづこ」とも》古代のかばねの一。中央にあって伴造とものみやつことしてそれぞれ品部しなべを統轄する地位にあった氏族にこの姓が多い。天武天皇八色やくさの姓制定にあたり、この姓の有力な氏族の多くはむらじ姓を賜った。

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普及版 字通 「造」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

(旧字)
11画

[字音] ゾウ(ザウ)
[字訓] いたる・つくる

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
字の初形はに作り、は舟+(告)。舟は盤の形。は木の枝に祝を収める器((さい))をつけて神に訴え祈る意。わが国の申し文にあたる。盤中に供えものを薦め、申し文をつけてささげ、神のいたるのを迎えることを造という。前でその儀礼を行う意。の省文に従う字である。〔説文〕二下に「就(な)るなり」と訓するが、就は訓義多く、「就(な)る」「就(つ)く」などとよむ。〔説文〕に(こく)声とするが、は字の初形でなく、古文として録するの省文に従う。金文の〔令彝(れいい)〕に「用(もつ)て王の(げきざう)にす」とあり、逆造は出入の意。〔礼記、王制〕「(でい)()にす」は祭名。〔麦(ばくか)〕「(つひ)に用て(な)す」は成就の意。〔頌壺(しようこ)〕「新)の貯」は新しく屯倉を設営する意。字の初義は、ほとんどすでに金文の用義のうちにみえる。字は(草)・曹に通用することがあり、造次・両造のようにいう。

[訓義]
1. いたる、いたす、いのる、つげる。
2. はじめる、はじめ、つくる。
3. なる、おわる。
4. 祭の名、父をまつる。
5. にわか。
6. 遭と通じ、あう。

[古辞書の訓]
名義抄 ツクル・イタル・ツク・スナハチ・トブラフ・ナジル・ハジメ・ハジム・スム・ナリ・ホコル・タメニ・ミカラニ・ナラブ・ナル・ナス・アヘリ/ ニハカニ・スミヤカニ

[語系]
dzuk、就dziukは声義が近い。の初文はに作り、盤中にものを供えて告祭する意。成功を報告するときもその儀礼を用いる。就は軍門としての京が完成し、犬牲を供えて落成する意である。tsuも音近く、造次は草卒の意。曹dzuは法曹、獄の当事者を両造という。

[熟語]
造悪・造意・造為・造営造謁造闕造焉・造化・造・造形造詣・造言・造玄・造語・造構・造獄・造罪・造作・造始・造次・造舟・造就・造飾・造人・造成・造請造設・造説・造然・造端・造・造朝・造第・造反・造微・造氷造誣・造物・造邦・造訪・造謀造謗造昧・造謡・造立
[下接語]
営造・改造・贋造・偽造・急造・虚造・建造・巧造・構造・興造・再造・私造・修造・醸造・深造・新造・製造・繕造・創造・鍛造築造・鋳造・肇造・天造・捏造・変造密造・模造・乱造・濫造・両造

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「造」の意味・わかりやすい解説


みやつこ

古代の姓(かばね)の一つ。語源については「御臣(ミヤツコ)」説、朝鮮語の貴人の敬称説などがある。造姓氏族は190余を数え、天神、帰化人の後裔(こうえい)と称するものが多い。部民(べみん)を率いて大和(やまと)朝廷の職務を分担する中級の伴造(とものみやつこ)に与えられた姓であるが、賜姓の時期は連(むらじ)よりやや遅く、部民制の盛行した6世紀ごろであった。684年(天武天皇13)八色(やくさ)の姓の制定に際し、刑部造(おさかべのみやつこ)と忍海造(おしぬみのみやつこ)が第三位の宿禰(すくね)を、秦造(はたのみやつこ)が第四位の忌寸(いみき)を賜姓されたにとどまり、ほかは造姓のままにとどめおかれた。

[前之園亮一]

『太田亮著『全訂 日本上代社会組織の研究』(1955・邦光書房)』『阿部武彦著『氏姓』(1966・至文堂)』

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改訂新版 世界大百科事典 「造」の意味・わかりやすい解説

造 (みやつこ)

古代日本の(かばね)の一つ。〈みやつこ〉は,朝廷に仕える人の意で,品部の統率にあたった。造の姓を帯びる氏族に矢田部造,鳥取造,稚桜部造,馬飼造などがあり,氏名に部民名や職名を冠するのは,それぞれの部の伴造(とものみやつこ)であったことによる。683年(天武12)9月に水取造,矢田部造,藤原部造,刑部造,福草部造,殿服部造,錦織造,縵(かつら)造,鳥取造などの諸氏は,(むらじ)の姓を賜っている。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「造」の意味・わかりやすい解説


みやつこ

古代の (かばね) の一つ。その語源は,御奴,御家ッ子など諸説がある。地方的君主の尊称などといわれる。古くは,国造や職業的部民の統率者である伴造がみずから称したものであろう。姓が制度化された5世紀頃以降,造姓をもつ氏族は 200ほど知られている。その大部分は天皇や朝廷に属する職業的部民の伴造か,名代子代の部の伴造で,中央の氏族が多く,連姓の氏族よりもその地位は低かった。天武朝の八色の姓 (やくさのかばね) の制定で,造を姓とする氏族のうち有力なものは連以上の姓を賜わった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「造」の解説


みやつこ

古代のカバネ。「御奴」あるいは「宮つ子」の意とされる。「造」の字は,新羅(しらぎ)の第17等官位である造位からきているとする説もある。造姓を称する氏族は多く,ほとんどが伴造(とものみやつこ)氏族であるが,出自は皇別・神別・諸蕃と一定しない。これらの氏族は,5世紀末葉~6世紀におかれた新しい型の品部(しなべ)を管掌する伴造であり,より古い型の品部を管掌する連(むらじ)姓氏族よりも概して地位は低かった。造姓氏族のうち有力なものは683年(天武12)以降連姓を賜ったが,684年に制定された八色の姓(やくさのかばね)に造姓はなく,このとき10氏が第4等の忌寸(いみき)姓を賜った。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【氏姓制度】より


[政治制度としての氏姓制度]
 このような制度は,原始共同体において,氏族や部族が社会の単位となった,いわゆる氏族制度とは異なる。もちろん,氏姓制度の基盤も,血縁集団としての同族にあったが,それが国家の政治制度として編成しなおされ,同族のなかの特定のものが,(おみ),(むらじ),伴造(とものみやつこ),国造(くにのみやつこ),それに百八十部(ももあまりやそのとも)などの地位をあたえられ,それに応ずる氏姓を賜ったところに特色がある。その成立時期は,おそらく5,6世紀をさかのぼらないであろう。…

【伴造】より

…〈ばんぞう〉ともいう。伴(とも)は〈友〉であると同時に〈供〉をも意味し,朝廷を代表する大王に奉仕・従属する集団を指すことばで,造はそのかしらの意。日本では,7世紀後半に律令制による国家が成立したが,それに先立つ5~6世紀を中心とした時代は,諸氏族に朝廷の職務を分担させる体制で運営された(氏姓制度)。…

※「造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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