改訂新版 世界大百科事典 「タイノエ」の意味・わかりやすい解説
タイノエ (鯛の餌)
Rhexanella verrucosa
タイ科の魚類の口腔や鰓腔(さいこう)に付着,寄生している小型の等脚目タイノエ科の甲殻類。体は黄色または黄白色をしており,わずかに左右不相称を示し,小判形をしている。雄は体の幅がやや狭いが,雌では広い,体長も雄は1.5cm,雌では3cmくらいと雌雄異形を示しているが,実は雄性先熟の雌雄同体である。したがって,雄がのちに雌となって産卵する。幼生は浮遊生活をするが,成体になると完全に寄生生活をする。雌雄が同時に同一宿主に寄生していることも多い。日本沿岸にふつうに見られる。近い種類に,沿岸産の魚類の口腔に寄生するウオノエCymothoa eremita,深海魚に寄生するソコウオノエCodonophilus oxyrhynchaenusや,シマアジに寄生するシマアジノエCodonophilus trigonocephalusなどがいる。
執筆者:蒲生 重男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報