日本大百科全書(ニッポニカ) 「たこ配当」の意味・わかりやすい解説
たこ配当
たこはいとう
bogus dividend
fictitious dividend
dividend from capital
株式会社および持分(もちぶん)会社において、配当可能利益が存在しないにもかかわらず、違法な操作によって配当を行うこと。会社法により、自己資本が食いつぶされるため違法配当として禁止されている。たこ配当の名称は、飢えたタコ(蛸)が自分の足を食うとの話に由来し、「たこ配」とも略称される。配当が違法か否かは、配当可能利益があるかないかにかかっている。それは、貸借対照表上の純資産額から会社法461条2項に定めた自己株式の額など4種の金額を控除した額をいい、この範囲を超えた額の配当が違法になる。
たこ配当は、企業の信用維持、経営者の保身などを目的として、粉飾決算によって行われる。粉飾の多くは、売上げの水増し、経費の圧縮、子会社の利用、決算方法の変更などの方法によっている。たこ配当は違法であるから、会社はそれを受け取った株主・社員に対して、その返還を請求できる。しかし、多数の株主・社員から返還させることは事実上困難であるから、取締役に違法配当額を弁償させる責任を負わせ(会社法462条ほか)、さらに刑罰を科することにしている(会社法960条)。
[森本三男]