翻訳|dividend
企業が株主に対し、利益の一部を保有株式数に応じて分配する利益還元策。企業の最終的な損益が赤字に陥るなどして配当を行わない「無配」とすることもある。配当金は過去の利益の蓄積である利益剰余金を原資とするのが通例。利益剰余金がマイナスとなった場合、株主が企業に払い込んだ資本の一種である資本剰余金から支払うこともできる。
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ひろく財産を一定の範囲の人に一定の基準に従って分配すること,またそうして分配した財産を配当というが,これには会社,とくに株式会社や有限会社が行う利益配当,株式会社における建設利息(商法291条)の配当,強制執行または破産手続(破産)において差押債権または破産財団をもって多数の債権者に対して割当弁済をする意味での配当,あるいは船主責任制限制度における基金の債権者に対する配当など,いろいろな場合がある。ここでは株式会社における利益配当について述べる。
株式会社における利益配当とは,定期的に決算を行い,利益を株主に分配することである。利益配当請求権は,株主の有する諸権利のうち最も重要なものといってよい。したがって配当できる利益が十分あるにもかかわらず利益配当を行わないというようなことは許されない。もっとも会社の健全な経営の必要上,合理的な範囲内で配当額を少なくすることができるのは当然である。配当金額をどのくらいにし,また,どのくらいを配当せずに会社に留保するかは会社の配当政策の問題であるが,一般に日本では会社があげた利益の多寡にかかわらず,1株当りの配当額を一定に保とうとする傾向がある。これに対して,たとえばアメリカなどでは,会社があげた利益の多寡によって,配当額を増減する傾向があり,日本においてもこのような配当政策を取り入れるべきだという主張もある。
ところで株式会社が配当することのできる利益については,その営業年度に得た利益を基礎にして配当限度額を定める立法も考えられるが,日本の商法はこのような立場を取らず,貸借対照表上の純資産額(資産から負債を差し引いた額)を基礎にし,それから一定の金額を差し引いた額を配当限度額としている。すなわち,純資産から資本金,既存の資本準備金,利益準備金およびその期に積み立てなければならない利益準備金を控除し,さらに特定の目的で自己株式を買い受け,保有するときは,資産の部に計上したその自己株式の金額を控除した額を配当可能利益とする(商法290条1項1~3号,5号。〈準備金〉の項参照)。もし,開業準備費,試験研究費および開発費を繰延資産として計上していた場合,その合計額がすでに積み立てた資本準備金,利益準備金およびその期に積立てを要する利益準備金の合計額を超過しているときはその超過額も控除する必要がある(290条1項4号)。以上についてこれを式の形で表すと次のようになる。
{純資産-(資本金+既存の資本準備金と利益準備金+上記自己株式の金額の合計額)}×10/11=配当可能利益
10/11をかけるのは,その期に積立てを要する利益準備金の額が,その期の金銭による利益配当額の10分の1以上とされていること(288条)による。もし,開業準備費等が繰延資産として計上されている場合には,純資産額-(資本金+上記繰延資産額+上記自己株式金額)の式により算出された金額と上記の式により算出された金額との少ないほうが配当可能利益となる。配当可能利益を超過して配当することは,違法配当すなわちいわゆる蛸配当となる。
配当可能利益は配当できる最高限度額であって,実際にはこれが全部配当されるわけではない。実際に配当される額は,次のようになる。純資産額から,資本金,すでに積み立てた資本準備金,利益準備金を差し引いたものは,貸借対照表上,剰余金であるが,この剰余金からすでに積み立てている任意準備金を差し引いたものが当期未処分利益(損失となる場合は当期未処理損失となる)である。当期未処分利益からその期に積み立てなければならない利益準備金を差し引き,また定款あるいは株主総会でその期に積み立てる旨定めた任意準備金を差し引き,さらに役員賞与を差し引いたものが株主に配当される。この金額を株式数で割った金額が1株当りの配当額である。もし利益が少ない場合には,すでに積み立てていた任意準備金の一部を取りくずして配当財源にあてることもある。
利益配当は,原則として各株主が有する株式の数に応じて分配される。ただし,優先株(優先株・劣後株)のように特別に扱われる株式もある。なお,営業年度の途中で新株が発行される場合には,新株が発行された後の期間について日割計算で配当されるのが普通である。これを日割配当という。
利益配当を含めた利益処分の確定については,最終的に株主総会による承認が必要である。この点アメリカのように取締役会による配当宣言で確定する立法もある。この確定によって株主に具体的に利益配当請求権が発生する。この支払請求権は,決算期の末日に株主名簿に記載されている株主に帰属する。配当金の支払方法としては,株主からあらかじめ銀行が指定されていればその指定銀行の株主の口座に振り込み,そのような指定がなければ,株主に配当金額を記載した配当金領収証を送る。配当金領収証を受け取った株主は会社の指定した取扱銀行でこれと引換えに支払を受けることができる。配当金は,会社の事務処理上,5年とか3年の経過で会社が支払義務を免れる旨定款で定めているのが普通であるが,このような定めは不当に短いものでなければ有効と一般に解されている。
執筆者:田村 諄之輔
利益配当は金銭によるのが建前であるが,株式をもってする配当も認められている。これを株式配当(株配)といい,配当の全部または一部を資本に組み入れて新株を発行して株主に分け与えるものである。額面50円の株式で1株当り5円の株式配当という場合は,10株に対して1株の割合(税込み)で支払われる。株主にとっては,株式の時価が額面を上回っている場合には金銭配当よりも有利である。このような金銭配当や株式配当を行おうとするときは株主総会の決議によらなければならない。
以上のような定時株主総会の承認を経て支払われる配当のほかに,1974年の商法改正によって導入された中間配当という制度がある。営業年度を1年とする会社は,定款に定めることによって営業年度内の一定の日の株主に対して取締役会の決議に基づいて中間配当として金銭の分配を行うことができる。中間配当限度額はおおむね期末配当金の場合と同様であるが,加えて前期の定時総会における利益処分額も配当対象額から控除しなければならない。さらに当期末に欠損のおそれがある場合は配当できない。現在では上場会社について見るならば,その大半が中間配当を行っている。
なお,配当を性格別にみると,普通配当,特別配当,記念配当という分け方もある。特別配当は利益水準が一時的に高まったときなどに実施するもので,普通配当ほどの安定性はなく,数期間後には廃止することを前提にしている場合が多い。記念配当は創業記念などの名目で実施するもので1期限りのことが多い。また1株当りの配当金を増やすことを増配,減らすことを減配と称している。
→株式配当 →中間配当
執筆者:山下 一宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般的には、財産や利益の分配を意味する。これには利益配当と執行法上の配当との2種がある。前者は、株式会社や有限会社の社員に決算期において分配される利益の一部分をいう。後者は、さらに、民事執行における配当と破産手続における配当に分類される。執行の目的物あるいは破産財団を換価して得られた金銭を、多数の債権者にその債権の優劣・順位および債権額に応じて分配する点では、この両者は共通している。しかし破産手続は、債権者が多数存在し、破産者が債務の全額を支払えないことを前提とするから、当然に配当を予想している。これに対し、民事執行においては、債権者が競合し、差押金銭、売却金、あるいは管理収益が債務の全額および執行の費用を弁済するのに不足するときに配当が行われる(民事執行法84条2項)のであって、つねに行われるとは限らない点で両者は異なる。
民事執行において配当にあずかる者は、差押債権者、執行力ある正本(執行文の付された債務名義の正本)を有する債権者(有名義債権者)で二重の執行申立てをした者または配当要求をした者、執行力ある正本を有しない(無名義債権者)が仮差押えの申立てをしてこれの執行をし配当要求をした者、および二重の執行申立てまたは配当要求をした担保権者である(民事執行法87条)。配当は配当表の記載に基づき行われるが、配当の順位が同じ者の間では、執行申立て・配当要求の先後にかかわらず、債権額に比例して案分で平等に行われる(平等主義)。なお、担保権実行手続たる任意競売についても、右とほぼ同様である。破産手続においては、届出債権についての債権調査を経た配当表に基づき、配当が行われるが、その場合に、届出債権の順位に応じ順次、債権額に応じて案分して行われる(破産法193条以下)。
[本間義信]
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出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…そして江戸時代にも廻船が公儀および武家荷物を運送する場合に慣行とされ,また町人荷物と積合にする場合にも適用され,船主対武家は単独海損,船主対町人は共同海損として処理することを原則とした。共同海損は,中世は配当といい,14世紀初めの南北朝ころにはすでに行われ,中世後半からは《廻船式目》や海路諸法度にも,その方法に関する条文が見え,民間商船において慣行とされていた。江戸時代には運賃積運送をもっぱら行った菱垣(ひがき)・樽廻船において,この制度が確立し,最も厳格に行われた。…
…利益処分に関する株主総会の普通決議により,配当可能利益の全部または一部を資本に組み入れることができるが(商法293条ノ2),その際,資本組入額を引当てにして新株を発行し,株主に分配することもできる。この株式発行は株式分割にほかならないが,これを株式配当と呼ぶこともある。…
…反面,理論も実務も,この新しい展開に必ずしも十分に対応しておらず,解釈論上,運用上さまざまな問題があらわれている。
[手続の概略]
破産手続は,通常は,大きく,破産手続を開始するか否かを決定する手続(宣告手続),配当にあてる財産を確定してその原資を得る手続(破産財団の管理換価手続),配当を受ける債権者を確定する手続(債権確定手続),手続を終結するための手続(配当手続)とに分けられる。(1)宣告手続 破産は,破産原因(支払不能・支払停止,債務超過。…
※「配当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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