配当(読み)はいとう

精選版 日本国語大辞典 「配当」の意味・読み・例文・類語

はい‐とう ‥タウ【配当】

〘名〙
① 配り当てること。わりあてること。配分すること。また、その額。わりわたし。
※世鏡抄(室町末か)下「隠居分所領配当の事」 〔周礼疏‐地官・郷師〕
会社利益金、または建設利息株主などに分配すること。またその金銭
※会社弁(1870)〈福地桜痴〉諸会社取建の手続大要「以上四種の利益を以て会社の入用に供し株主等に利を配当す」
強制執行などの手続きで、差押物の競売による売得金を、多数債権者に対し、債権額に応じて割当弁済すること。また、その金銭。
※民事訴訟法(明治二三年)(1890)五八九条「民法に従ひ配当を要求し得へき債権者は」
破産管財人法定の手続きを経て破産債権者に平等の債務を弁済すること。また、その金銭。
破産法(1922)二六〇条「破産管財人は配当に加ふへき債権の総額及配当することを得へき金額を公告することを要す」

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デジタル大辞泉 「配当」の意味・読み・例文・類語

はい‐とう〔‐タウ〕【配当】

[名](スル)
割り当てて配ること。配分すること。「役割配当する」「学年別配当漢字」
会社などが株主・出資者に利益または剰余金の分配をしたり建設利息を支払ったりすること。「株式配当
強制執行破産手続きで、差し押さえ財産または破産財団を多数の債権者債権に対して割り当て弁済すること。
[類語]配給配分分配配る分ける分かつ分与案分折半山分け

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「配当」の意味・わかりやすい解説

配当
はいとう

一般的には、財産や利益の分配を意味する。これには利益配当と執行法上の配当との2種がある。前者は、株式会社有限会社の社員に決算期において分配される利益の一部分をいう。後者は、さらに、民事執行における配当と破産手続における配当に分類される。執行の目的物あるいは破産財団を換価して得られた金銭を、多数の債権者にその債権の優劣・順位および債権額に応じて分配する点では、この両者は共通している。しかし破産手続は、債権者が多数存在し、破産者が債務の全額を支払えないことを前提とするから、当然に配当を予想している。これに対し、民事執行においては、債権者が競合し、差押金銭、売却金、あるいは管理収益が債務の全額および執行の費用を弁済するのに不足するときに配当が行われる(民事執行法84条2項)のであって、つねに行われるとは限らない点で両者は異なる。

 民事執行において配当にあずかる者は、差押債権者、執行力ある正本(執行文の付された債務名義の正本)を有する債権者(有名義債権者)で二重の執行申立てをした者または配当要求をした者、執行力ある正本を有しない(無名義債権者)が仮差押えの申立てをしてこれの執行をし配当要求をした者、および二重の執行申立てまたは配当要求をした担保権者である(民事執行法87条)。配当は配当表の記載に基づき行われるが、配当の順位が同じ者の間では、執行申立て・配当要求の先後にかかわらず、債権額に比例して案分で平等に行われる(平等主義)。なお、担保権実行手続たる任意競売についても、右とほぼ同様である。破産手続においては、届出債権についての債権調査を経た配当表に基づき、配当が行われるが、その場合に、届出債権の順位に応じ順次、債権額に応じて案分して行われる(破産法193条以下)。

[本間義信]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「配当」の意味・わかりやすい解説

配当
はいとう
dividend

営利法人である会社が,出資者や株主などに利益を分配すること。あるいは,強制執行または破産の手続きにおいて,債務者または破産者の財産を換価し,それを多数の債権者の間に割当弁済すること。(1) 剰余金の配当,利益配当 株式会社が株主に対して剰余金を配当すること(会社法105条1項1号,453条)。ただし,会社の純資産額が 300万円を下回る場合には剰余金の配当ができない(458条)。持分会社の場合,社員は利益を配当することを請求できる(621条1項)。(2) 中間配当 破産手続において,一般の債権調査終了後に,破産管財人(→管財人)が配当するのに適当な金銭があると認めるごとに破産債権者に対し行なう配当(破産法209条1項)。取締役会設置会社は,1事業年度の途中において 1回にかぎり取締役会の決議により剰余金の配当(金銭にかぎる)をすることができる旨を定款で定めることができる(会社法454条5項)。(3) 配当手続 金銭債権についての民事執行手続または破産手続において,差し押さえ財産または破産財団をもって多数の競合する債権者に対し割当弁済をする手続き。

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世界大百科事典 第2版 「配当」の意味・わかりやすい解説

はいとう【配当 dividend】

ひろく財産を一定の範囲の人に一定の基準に従って分配すること,またそうして分配した財産を配当というが,これには会社,とくに株式会社や有限会社が行う利益配当,株式会社における建設利息(商法291条)の配当,強制執行または破産手続(破産)において差押債権または破産財団をもって多数の債権者に対して割当弁済をする意味での配当,あるいは船主責任制限制度における基金の債権者に対する配当など,いろいろな場合がある。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「配当」の解説

配当

株主が、利益配当請求権に基づいて受け取れる利益の分配のこと。一般には現金によって支払われる現金配当を指す。配当は株式会社の仕組みに従い、会社の利益を源泉として支払われるものであるため、その金額は一定ではない。赤字で利益のない当該期や、あっても少なく、内部留保を厚くしたい場合には「無配」、すなわち配当が支払われない場合がある。無配になる場合も含め、配当の金額は株主総会の決議によって決定される。配当には、普通配当(いわゆる一般的な配当)、四半期配当、中間配当、特別配当、記念配当がある。

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株式公開用語辞典 「配当」の解説

配当

株式を発行した企業は利益を上げると株主にそれを分配する。その分配された利益のことを配当という。 株主は、利益配当請求権に基づき配当を受け取ることができ、権利確定日における株主のみが受け取ることができる。 企業は、自らの活動の成果として得られる利益を源泉として、株主に対して配当を支払う。配当は、様々な条件により常に変動する。

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デジタル大辞泉プラス 「配当」の解説

配当

英国の作家ディック・フランシスのミステリー(1981)。原題《Twice Shy》。競馬界を舞台にしたシリーズの第20作。

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普及版 字通 「配当」の読み・字形・画数・意味

【配当】はいとう

わりあて。

字通「配」の項目を見る

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世界大百科事典内の配当の言及

【海損】より

…そして江戸時代にも廻船が公儀および武家荷物を運送する場合に慣行とされ,また町人荷物と積合にする場合にも適用され,船主対武家は単独海損,船主対町人は共同海損として処理することを原則とした。共同海損は,中世は配当といい,14世紀初めの南北朝ころにはすでに行われ,中世後半からは《廻船式目》や海路諸法度にも,その方法に関する条文が見え,民間商船において慣行とされていた。江戸時代には運賃積運送をもっぱら行った菱垣(ひがき)・樽廻船において,この制度が確立し,最も厳格に行われた。…

【株式配当】より

…利益処分に関する株主総会の普通決議により,配当可能利益の全部または一部を資本に組み入れることができるが(商法293条ノ2),その際,資本組入額を引当てにして新株を発行し,株主に分配することもできる。この株式発行は株式分割にほかならないが,これを株式配当と呼ぶこともある。…

【破産】より

…反面,理論も実務も,この新しい展開に必ずしも十分に対応しておらず,解釈論上,運用上さまざまな問題があらわれている。
[手続の概略]
 破産手続は,通常は,大きく,破産手続を開始するか否かを決定する手続(宣告手続),配当にあてる財産を確定してその原資を得る手続(破産財団の管理換価手続),配当を受ける債権者を確定する手続(債権確定手続),手続を終結するための手続(配当手続)とに分けられる。(1)宣告手続 破産は,破産原因(支払不能・支払停止債務超過。…

※「配当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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