改訂新版 世界大百科事典 「タサダイ族」の意味・わかりやすい解説
タサダイ族 (タサダイぞく)
Tasaday
フィリピンのミンダナオ島,南コタバト州の山地に住むマノボ族系の小集団。標高約1200mの地点に位置する三つの洞窟に居住する。1966年にマノボ族の猟師ダファルが彼らと接触したのがきっかけとなり,国家少数民族問題担当の大統領補佐官マヌエル・エリサルデ・ジュニアによって組織された学術調査団が71年6月に現地調査した。この調査を通じてタサダイ族の存在が初めて公表された。当時の人口はわずか27名。ダファルに接触する前のタサダイ族は文明から隔離され,採集生活を営んでいた。野生のヤムイモを主食とし,木の実や芽,キノコのほか,川でとれる小魚,オタマジャクシ,カニ,エビ,カエルなどを副食としていた。おもな道具は,ヤムイモの根を掘り出す掘棒と旧石器式の石斧程度だった。ダファルと接触してから,火打石や山刀,小刀,矢や槍をもつようになり,生活空間を拡張していった。
執筆者:宮本 勝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報