改訂新版 世界大百科事典 「掘棒」の意味・わかりやすい解説
掘棒 (ほりぼう)
可食性の根茎や塊根を掘り出したり,土を軟らかくしたり,突いて植穴を作ったり,除草のためなどに用いられる棒。もっとも簡単な掘棒は,棒の下端を削ってとがらせただけのものである。この種の簡単な掘棒は採集狩猟民にひろくみられるほか,東南アジアやインド,オセアニア,さらに熱帯アメリカなどの焼畑農耕民のもとにもひろく分布している。掘棒には使いやすくするため,さまざまの形態のものが生み出された。その下端を広くしてシャベル状にしたり,先端を二叉にしたり,さらに石器や骨器あるいは金属器の刃先を装着したものも少なくない。〈竹馬式の足かけ〉をつけ,土掘りを容易にした大型の踏み鋤も掘棒の一種といえる。日本の鋤や中国古代の耒耜(らいし)なども掘棒の一種である。先端に刃先をつけた掘棒(踏み鋤)に縄をつけて,前方へひくことによって犂が発生したとみられている。犂耕の発達により,掘棒耕作が卓越する地域は,現在では前述の焼畑農耕地域に限られてしまった。
執筆者:佐々木 高明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報