翻訳|Mindanao
フィリピン南部の大島。面積9万4627平方キロメートルで、同国ではルソン島に次ぐ。各種の構造方向をもつ島が結合して形成されたため、多数の湾やサンボアンガ半島、ダバオ半島などの出入りのある複雑な地形となっている。島内は一般に高地、卓状地が発達し、これに火山活動も加わる。最高点はアポ火山(2954メートル)。アグサン、ミンダナオの両大川がそれぞれ北方、西方に流れ沖積平野をつくるが、ことに後者中流部のコタバト平野は肥沃(ひよく)である。位置の関係上台風の被害は少ないが、雨はとくに東部地方に多い。
民族分布はきわめて複雑で、原マレー系のバゴボ、マンダヤ、ブギノドン、タグバヌアなどは主として東半部に住み、焼畑、狩猟を行い、続成マレー系のマラナオ、マギンダナオ、タウスグなどはおもに中部から西部に居住し、早くからイスラム教に帰依(きえ)し、やがてキリスト教化したほかの民族集団と絶えず対立してきた。土地が広く人口が少ないため、人口過剰のほかの島の民族にとって絶好の移住地とされ、20世紀初頭からはフィリピンのフロンティアとして多数の人が移住した。人口も第二次世界大戦前の180万が1975年に854万、95年にはミンダナオ島の主要5行政区の合計で1426万、2000年には同1604万と激増している。主たる産業は農業で、米、ココナッツ、トウモロコシ、アバカ、パイナップル、ゴム、キャッサバなどが栽培される。またラワンなどの林産物が豊かで、アグサン川やダバオ湾沿岸の港から日本などに積み出されるが、乱伐による自然破壊、資源枯渇が大きな問題となっている。金、銀、鉄、石炭などの鉱物資源も開発されている。おもな都市は、ダバオ、サンボアンガなど。
[別技篤彦]
フィリピンでルソン島の次に大きい島。面積9万4600km2。人口約1600万(2000)。行政的には島全体が18州に分かれ,そのなかに14の政令都市が含まれる。フィリピン群島最南部に位置し,四方を太平洋,ミンダナオ海,スールー海,セレベス海に囲まれる。東西約520km,南北約470kmで,不規則な形のサンボアンガ半島が西部に突出する。東岸部のディワタ山脈,その西側の中央高地,サンボアンガ半島の脊梁山脈,南西部のティルライ山地の4褶曲山脈と,中央北部のブキドノン,ラナオ両台地が島の骨格を形成する。ミンダナオ川およびアグサン川流域に広がる沖積平野はもとより,ブキドノン,ラナオ両台地上に開けるなだらかな高原が,豊かな農業開発に適した土地を提供してくれる。
中央高地南部のアポ山(2954m)が最高峰で,フィリピンの最高峰でもある。低緯度に位置するため北東端を除いて台風に襲われることはなく,降雨も年間を通して分布し,季節性に乏しい。年降水量は南部のサランガニ湾付近のように1000mm前後の寡雨地帯から,北西部のクラリン(西ミサミス州)のように5000mm以上に達する地点まである。
島は北岸部を除き元来フィリピン人イスラム教徒(モロ族)と山間部族民の住む島であった。20世紀に入ってアメリカによる平定が進み,以来中・北部からフィリピン人キリスト教徒が大量に移住・入植し,先住民を追いやって肥沃な低平地を占拠した。これが現在にまで続くイスラム教徒問題の発端である。主たる産業は農業で,小農民による米・トウモロコシ栽培のほか,大農園によるマニラアサ(アバカ),パイナップル,バナナ,ゴムなどの商品生産の展開が顕著である。とくに注目されるのは外資系企業と大農園による小農駆逐の進展で,社会不安の重要な要因となりつつある。森林資源にも恵まれ,ダバオ,スリガオ,アグサンの諸州から大量のラワン材が切り出され,日本に輸出された。目下乱伐による自然破壊,資源枯渇が大きな問題となっている。鉱物資源としてはシブゲイ半島の鉄鉱石,北スリガオ州の褐鉄鉱が有望視されている。
執筆者:梅原 弘光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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