改訂新版 世界大百科事典 「タンク窯」の意味・わかりやすい解説
タンク窯 (タンクがま)
耐火煉瓦で築かれた槽(タンク)にアーチ状の天井がついている箱型の窯。板ガラス,瓶ガラス,ガラス繊維などに用いられるガラス原料を多量に連続して溶融するための代表的な窯である。加熱は側面あるいは後部から,重油あるいはガスバーナーで行われる。窯の構成は溶融部,清澄部,作業部から成る。溶融部は原料投入口から連続して入ってくる原料を1400~1600℃で溶融する。溶融したガラス原料は清澄部でガラス化反応を十分行い,泡をとり,均質なガラスとなる。均質になったガラスはスロートを通って作業部に入り,1000~1200℃の一定温度に保たれ,成形される。タンク内に溶融しているガラスは数tから数千tで,1日に数tから800tのガラスが作られる。投入された原料は数時間から数日を経て作業部へ到達する。板ガラス用の大きな窯では,タンクの寸法は30m×10m×1.5m程度であり,1日数t以下の少量生産には熱効率が悪く不適である。一度火を入れると数年間は運転しつづける。その後,火を止めて冷修と呼ばれる作業を行う。これは一部傷んだ耐火煉瓦を取り替え修理することで,修理が完了すればさらに数年間使用する。またガラスの溶融には,形式が同じで溶融,清澄,成形を不連続に1日ないし2日周期で行う小型窯でデータンクday tankと呼ばれる窯も使用される。
執筆者:清水 紀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報