重油(読み)じゅうゆ(英語表記)heavy oil

翻訳|heavy oil

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

重油
じゅうゆ
heavy oil

原油を蒸留してガソリン,灯油軽油などの留分を除いたあとの常圧蒸留残油 (常圧残油,直留残油または釜残油) ,またはこれとナフサより重質の留出油との混合物の総称。また直留残油から減圧蒸留によって潤滑油アスファルト,ピッチなどを除いた場合にも重油と呼んでいる。工業用燃料として重要な役割を占めており,加熱用燃料たとえば製鋼,セメント,冶金,ボイラ用などに用いられる一方,ディーゼル機関の燃料にも使用される。また,カーボンブラックの原料や都市ガス原料,石油コークスの原料などにも用いられる。石炭に比べて熱効率が高いうえ,完全燃焼しやすく,すすや灰も少い,また着火も容易,さらに貯蔵や調節が便利であるなど利点が多いため,日本では 1960年代以降,急速に石炭に取って代る傾向が進んだ。これを第1次エネルギー革命と呼んでいる。重油の比重は 0.9~1.0。発熱量は 1kgあたり1万~1万 1000kcal,品質や用途によって便宜上,A重油B重油C重油の3種類に分けられている。A重油は軽油を主成分とし,これに 10%程度の常圧残油を混合して製造されるもので,重油中最も軽質で粘度が低く,硫黄分も少いので,低速ディーゼル燃料として一般に使用される。B重油は軽油 50%,残油 50%程度の混合物で,ディーゼル燃料,バーナー燃料として使用される。粘度の高いC重油は,バーナー燃料として使用される。重油のなかで硫黄含有量の多いものは,加熱する装置や製品の品質をそこなう可能性が大きいうえ,燃焼に伴って発生,排出する硫黄酸化物が産業公害の原因になるので,硫黄分の少い原油の利用,重油中の硫黄分を取除く重油脱硫処理,燃焼ガスから硫黄を取除く排煙脱硫処理,また重油にしないで軽質留分を含めたまま燃焼させる原油生焚きなどの試みが多角的に行われている。石油製品の需要構造が重油から軽油への多消費型へと変化してきたため,ガソリン製造の中心的技術であった重油分解法 (熱分解法,接触分解法,水素化分解法) を,余剰重油から軽油製品を製造する技術として広く応用することも行われるようになった。

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デジタル大辞泉の解説

じゅう‐ゆ〔ヂユウ‐〕【重油】

原油から揮発油・灯油・軽油などを分留したあとの、残りの高沸点の油。黒色で粘度が高く、比重0.9~1.0。真空蒸留すると潤滑油・アスファルトが得られる。ディーゼル機関・大型ボイラーなどの燃料に使用。
コールタールから得られるクレオソート油
[補説]JIS規格では粘度の少ない順に1種(A重油)・2種(B重油)・3種(C重油)の3種に分類される。

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百科事典マイペディアの解説

重油【じゅうゆ】

(1)コールタール中に含まれる重質油クレオソート油(2)ディーゼルエンジン,ボイラー,各種加熱炉などの燃料として使用される石油。原油を常圧蒸留してガソリン,灯油,軽油を留出した残油。品質によりA(窯業,金属精錬,小型内燃機関用),B(小・中型ディーゼルエンジン用),C(大型ボイラー,大型ディーゼルエンジン,鉄鋼,一般用)に分類される。発熱量は9500〜1万200kcal/kgで,石炭の1.5〜2倍。
→関連項目ディーゼルエンジン

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世界大百科事典 第2版の解説

じゅうゆ【重油】

コールタールの蒸留によって得られる重質油heavy oilをさすこともあるが,一般には工業用のボイラー,加熱炉その他の燃料として使用される石油をいう(英語名はfuel oil)。原油を常圧蒸留して得られる重質の残油を材源として生産されるのでこの名がある。日本では工業用燃料の大部分が重油であったが,石油危機以来,石炭や原子力が重油需要の一部(たとえば電力,鉄鋼,セメントなどの分野)を代替するようになり,最近の重油消費量はA重油を除いてやや低下傾向にある。

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大辞林 第三版の解説

じゅうゆ【重油】

原油を常圧蒸留して軽油までを留出させたあとの残油に、軽油などの留出油を混合して製した石油製品。ディーゼル-エンジンやボイラーなどの燃料に用いる。元来は、原油の常圧蒸留後に釜に残る黒色・粘稠ねんちゆうな残油をさした。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

重油
じゅうゆ
fuel oil

燃料油の一種で、軽油より比重が大きいことから重油とよばれるようになった。重油は比重0.82~0.97の、褐色または黒褐色の粘稠(ねんちゅう)な油である。重油は、原油から常圧蒸留によりナフサ・灯油・軽油などの軽質油を除いた残油、この残油から減圧蒸留により減圧軽油を除いた残油、ほかの石油精製プロセスで副生する残油、またはこれらの残油に軽油を混合したものである。原油の性状にもよるが、原油の30~50容量%は重油として製品化されている。発熱量は重油1リットル当り1万0240~1万1100キロカロリーであり、石炭の1.5倍以上である。
 重油は粘度によりA重油、B重油、C重油に大別され、さらにJIS(ジス)(日本工業規格)により粘度、硫黄(いおう)分、流動点などの異なった6種類の規格に分類されている。[難波征太郎]

重油の粘度

粘度は重油の移送や燃焼の際の噴霧化に影響を及ぼす。流動点の高いものは取扱いが不便である。硫黄分は大気汚染と関係するほか、煙道の腐食、窯業あるいは銅精錬など燃焼ガスが直接製品に触れる場合の製品の品質に影響を及ぼす。現在では、とくに大気汚染防止のため水素化脱硫により重油の低硫黄化が行われている。[難波征太郎]

生産量

2006年(平成18)に日本で生産された重油は約6000万キロリットルであり、そのうちA重油は43%、B重油は生産が少なく、B・C重油で57%である。需要との関係からC重油の割合は毎年低下しているが、高品位の重油を製造するためには大量の脱硫した軽油が必要であり、経済的あるいは石油製品のバランス上の問題があるため限界がある。
 重油は灯油や軽油に比べて蒸発しにくいため、燃焼はバーナーから噴霧させて霧状とし、空気とよく混合して行う。燃焼を円滑に行わせるために、助燃剤、流動点降下剤、スラッジ分散剤などの添加剤をあらかじめ重油に加えておく場合が多い。[難波征太郎]

用途

A重油のおもな用途は窯業用、金属精錬用、小型ディーゼルエンジン用などであり、B重油は大型ディーゼルエンジン用などであり、C重油は大型ボイラー用、大型ディーゼルエンジン用、鉄鋼用などである。重油は石炭に比べて発熱量が多く、流体燃料であるために、調節、取扱いが容易であることから、燃料としての石炭にとってかわり需要は飛躍的に増大した。しかし、1973年(昭和48)の第一次石油危機後の石油価格の高騰に伴い、重油の需要は減少傾向にあり、液化天然ガスへの燃料転換、石炭の復活などで、とくにC重油の需要が減っている。[難波征太郎]

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