耐火物のうち,特定の形状に成形されたものをいう。高温工業用材料として,各種窯炉の高温部に使用される非金属無機材料であり,耐火物の主体を占める。主成分は高融点を有する金属酸化物類で,その組合せによって多くの種類がある。日本における耐火煉瓦の用途別需要量の割合は表1に示すとおりで,鉄鋼用が約70%と圧倒的に多い。また,最近では,これとは別に輸出用が全生産の10%以上を占めるまでになっている。
耐火煉瓦の品種は原料によって区分されるのが一般的である。これは,その製品特性が原料の性状に依存することが多いからである。したがって,耐火煉瓦工業は,粉粒体の耐火原料を使って一定の形状をもつ煉瓦を造りあげる造形技術で,その基本は原料のもつ必要特性を煉瓦組織として完成させることにある。耐火煉瓦の原料の多くは天然原料で,これには,(1)ケイ石,蠟石,耐火粘土,ケイ線石(シリマナイト),クロム鉄鉱,ジルコン,黒鉛などを採鉱,選別,粉砕し,焼成せずに直接使用するものと,(2)耐火粘土,ボーキサイト,マグネサイト鉱,ドロマイト鉱などのように,あらかじめ焼成し,収縮を除去して,それぞれシャモット,焼ボーキサイト,マグネシアクリンカー,ドロマイトクリンカーとして使用する加工原料とがある。一方,高純度,高性能の原料として,最近,人工合成原料の重要性が増してきている。そのおもなものとしては,海水中のマグネシウムイオンを水酸化マグネシウムとして析出・沈殿させ,これを焼成して得られるマグネシアクリンカー,ボーキサイトから得られるアルミナ,アルミナにシリカを加えた合成ムライト,シリカを還元・炭化した炭化ケイ素などがある。これらの原料は,主として愛知県(耐火粘土,ケイ石),岡山県・広島県(蠟石),大分県(ケイ石),鳥取県(クロム鉄鉱),栃木県・岐阜県(ドロマイト鉱)などで産するが,一方,韓国(蠟石),中国(マグネシアクリンカー,黒鉛,バン土ケツ岩),朝鮮民主主義人民共和国(マグネシアクリンカー),ガイアナ(ボーキサイト),南アフリカ共和国(シリマナイト,高級シャモット),フィリピン(クロム鉄鉱),オーストラリア(ジルコン),アメリカ(高級シャモット),インド・スリランカ・旧ソ連(黒鉛)など,非常に多くの国から種々の原料が輸入され,輸入量も順次増加している。なお,マグネシア,アルミナ,クロム-マグネシアなどの一部は電融処理し,緻密(ちみつ)質で結晶の発達した原料として特殊な用途に用いられている。
耐火煉瓦はその製造法によって,(1)焼成煉瓦,(2)不焼成煉瓦,(3)電融鋳造煉瓦に分けられる。耐火煉瓦の約90%は焼成煉瓦であり,不焼成煉瓦は近年増加してきたが約10%,電融鋳造煉瓦(電鋳煉瓦)はさらに少なく1%未満である。
耐火煉瓦の性質を大きく左右する原料の選択は重要であり,それぞれ目的とする品種によって種々の原料鉱石を組み合わせて使用する。工程としてはまず,天然原料,加工原料,人工合成原料を選択し,選別を含む予備処理を行い,一定の粒度に粉砕して,混練工程に送る。この工程では,煉瓦形状に成形しやすくするために粒度構成を定め,副原料である水や結合剤を加えて,均一に混合,混練し,粒子の分散をよくする。この状態の原料混合物を坏土(はいど)と呼ぶ。従来は水を多く加えた湿式混練法が主体であったが,煉瓦形状と性能をよくするために,水を少なくした半乾式混練法(水分2~5%くらい)が主体になってきている。
成形工程は煉瓦を使用するのに便利な形状に造る工程で,大部分が機械成形される。この機械にはフリクションプレスが最も多く使用されているが,油圧プレス,メカニカルパワープレスなども用いられている。これらのいずれも半乾式の坏土が用いられている。この工程の主目的が形を造ることと同時に充てん(塡)をよくして,緻密質煉瓦にすることであるから,高圧成形法が賞用され,大型プレスが使用されるようになって,成形圧力も500~1000kgf/cm2以上となってきている。最近では1500tとか3000tプレスも利用されるようになっている。一方,ごく一部ではあるが,機械成形できない形状の煉瓦があり,これはエアランマーを併用した手打成形法が利用されている。この場合,湿式混練(水分10%くらい)した坏土が用いられる。なお,特殊な煉瓦の成形には,鋳込成形法,アイソスタティックラバープレス,振動成形機,ホットプレスなどが利用されている。
乾燥工程では,成形するために加えられた水分を除去し,焼成工程での亀裂,割れなどを防止するために十分な乾燥を行う。トンネル式の乾燥炉を使用して,80℃くらいまでの温度で乾燥するのが普通である。この熱源は省エネルギーのために,焼成炉の廃熱を利用するようになってきた。次の焼成工程では,角窯や丸窯などの単独窯,連続式のトンネル窯が使用され,品種によって種々の温度で焼成される(一般には1300~1800℃くらい)。ここで使用される燃料は重油が主体で,一部にガス焼成の場合もある。この焼成工程は結合組織を完成させる最もたいせつな工程である。最近では成形工程で高充てん率を得ることができるようになったので,結合組織の良好な耐火煉瓦が造りやすくなってきた。
不焼成煉瓦の製造法は,強度をもった安定な結合組織を,焼成の代りに化学結合によって得ようとするものであり,混練工程で種々の結合剤を添加する。原料面でも,高温で収縮のより少ない原料を使用し,成形面でも,より緻密質に充てんする高圧成形を行っている。ここで重要な結合剤は耐火煉瓦の種類によって異なるが,一般にはケイ酸ナトリウム系,種々のリン酸塩,フェノール樹脂,タール類などが使用されている。成形後,乾燥するだけで製品となるものと,300~400℃くらいで熱処理を行って製品となるものがある。なお,クロム-マグネシア系煉瓦などでは,成形時に外皮として鉄板をはめこんだメタルケース煉瓦もある。
電融鋳造煉瓦(電鋳煉瓦)は,原料を電気炉の中で溶融し,金属の鋳物と同じように,鋳型中に流し込んで製造するものである。
→電鋳耐火物
耐火煉瓦には高温に耐え,炉内の反応に耐える性質が基本的に必要であるが,その使用条件は非常に複雑多岐にわたるので,たいへんに多種多様の性能が要求される。耐火煉瓦は,耐火物としての一般的諸条件を満たすべきことはもちろんだが(〈耐火物〉の項参照),さらに一般に種々の形状の製品を多数組み合わせて使用するので,その形状・寸法の安定性が必要となる。種々の耐火煉瓦の一般的諸性質を表2に,また,その化学成分とおもな鉱物組成を表3に示す。多くの耐火煉瓦は酸化物系原料を使用しているので,酸化雰囲気中で使用する場合には安定であるが,還元雰囲気中ではとくに高温で劣化しやすいことがある。一方,非酸化物系または炭素系原料を用いた耐火煉瓦は酸化雰囲気中で著しく劣化することがあるので注意を要する。
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…煉瓦は直方体で,手で取り扱いやすい大きさ(たとえば21cm×10cm×6cm)をもち,各種築造材料に使用される。煉瓦と呼ばれるものの種類は,普通煉瓦のほか,耐火煉瓦,耐酸耐熱煉瓦,耐酸煉瓦が日本工業規格に定められている。このほかに軽量煉瓦,舗道煉瓦,釉薬(ゆうやく)煉瓦,鉱滓(こうさい)煉瓦,ケイ(珪)灰煉瓦,セメント煉瓦があり,それぞれ使用目的に応じて建築材料として使われている。…
※「耐火煉瓦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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