大学事典 の解説
ダートマス・カレッジ事件
ダートマス・カレッジじけん
アメリカ合衆国のニューハンプシャー州議会の干渉に抗したダートマス・カレッジ(私立大学)理事会の訴えが,私学の独立を支持した連邦最高裁ジョン・マーシャル,J.判事の1819年の判決を導いた訴訟。1769年のイギリス国王からの設立認許状で設立されたダートマスは,1810年代,その内紛に乗じた州議会により州管理下の機関へと改変された。これを不服とした旧理事会は連邦最高裁まで上訴し,その代弁者で卒業生のダニエル・ウェブスター,D.は,州議会の行為は契約としての認許状を毀損し,科学で国土を照らし続けた諸カレッジの消滅につながる,ダートマスは小規模なりといえども「それを敬愛する人々が存在する」と訴えた。マーシャル判事は,設立認許状は連邦憲法が保証する契約であり,州政府が一方的に変更できないと判決した。公による不干渉という法的保証のもと,私立大学はこれ以降,公立大学と並立する基盤を得た。同時に,公的な統制が必要となる1890年代まで,私企業の自由な活動を根拠づける結果ともなった。
著者: 立川明
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報