翻訳|college
イギリスやアメリカの高等教育機関の一部。ラテン語のコレギウムcollegiumがその語源。中世では主としてギルド的な団体を意味したが,まもなくユニバーシティの起源をなすuniversitasと同様に,学問的知識の伝達を目的とする学生や教師の団体のみをさすようになる。つづいてパリに建てられた学生用の寮がコレージュcollègeと呼ばれ,さらに自由奔放な学生の生活を規制する意図で,このような寮は教師が学生と起居をともにしつつ学問伝達と性格訓練を行う共同生活の場となった。しかし,この種のコレージュはフランスにおいてではなく,カレッジとしてイギリスで独特の発達をとげた。パリ大学から分離したオックスフォード大学,そこからさらに分離したケンブリッジ大学は現在でも独立した名称と自治権をもつカレッジの集合体である。ただし,かつてはイートン・カレッジEton Collegeのような中等段階の学校をさす場合もあり,これはフランスのコレージュが16世紀以来中等学校の一種であることに対応する呼名である。各カレッジはその正メンバーであるフェローfellowの団体によって運営され,カレッジの首長の選挙をはじめ,財政的にも学問研究と教育の面でも自律性をもつが,学位を授与する権限はカレッジではなく,その総合的運営をなすユニバーシティにある。伝統的教育内容は聖職者,法律家,医師になるための準備教育としての自由七科,とりわけ古典語を中心にした人文的教養であったが,19世紀以降自然科学,近代外国語,社会科学が徐々に加わり,古典的教養の地位が下がっていく。ほぼ同じころからここに宿泊しない学生も多くなり,それとともに生活指導の場としての性格がうすれてきた。他方,研究施設の大型化や高等教育人口の増大による大学の規模の拡大で,個々のカレッジの独立機能の限界があらわになってくる。アメリカで最初のハーバード・カレッジ(現,ハーバード大学)は,ケンブリッジ大学のエマヌエル・カレッジをモデルにして1636年に設立された。つづいて19世紀にかけて小規模のカレッジがアメリカ各地に多数つくられた。しかし19世紀末以後大学院レベルの専門職養成機関が発展するとともに,カレッジはその下に位置づく機関となる。年限では日本の4年制大学に当たるが一般教育のみを行う。ふつうはユニバーシティの一部だが,リベラル・アーツ・カレッジliberal arts collegeのように単独のものもある。なお,トレーニング・カレッジtraining collegeは教員養成,テクニカル・カレッジtechnical collegeは技師養成をそれぞれ行う単独の機関を意味するように,伝統的なイギリスの学寮やアメリカ的非専門高等教育機関の意味とは別の用い方もある。
→ジュニア・カレッジ →大学
執筆者:宮沢 康人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ラテン語のコレギウムに由来する高等教育の単科大学をさす。同じ語源でもイギリス、アメリカ以外の国で使われるときは、かならずしも高等教育の施設でない場合もある。もともとは、パリ大学のソルボンヌ・コレージュのように、中世において大学が発展していくおりに共同宿泊施設として発達したものであるが、純粋な教育施設としては13世紀にオックスフォード大学に設けられたマートン・カレッジが最初である。イギリスでは伝統的な大学は数多くのカレッジを設け、そこで学生が共同宿泊して学習および研究をする。ほかの近代的な高等教育機関にカレッジと称するものがあるが、これらはいわゆる単科大学である。アメリカの場合には普通、4年制の単科大学をカレッジと称し、総合大学(ユニバーシティ)と区別している。また、2年制の短期の高等教育機関はジュニア・カレッジと称される。また最近はコミュニティ・カレッジも普及しつつある。カレッジは一般に教員養成や、医学、法律、経済、技術などの高度の職業的高等教育の施設である。
[手塚武彦]
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…この間,学生数の増加に伴い,裁判上の特権をめぐって市民としばしば対立,〈タウンとガウン〉の争いと呼ばれる流血騒ぎを起こし,そのつど国王からの支持の下に,特権を獲得していった。学生は,教師が借りた下宿hostelで生活し,そこで自由七科の講義を受けたが,卒業後さらに研究の継続を欲する貧しい学生を対象に学寮college(カレッジ)が建設された。オックスフォード大学のマートン学寮にならって1284年に設立されたピーターハウスがその最初である。…
…フランスの中等教育機関。イギリス,アメリカの高等教育機関の一部をなすカレッジcollegeと同語源をもつことが示すように,中等教育と高等教育の制度的区分は近代の産物である。コレージュは最初ローマ帝政末期のコレギアの流れをひく同職者団体の意味をもち,のちに学生や教師の団体を指すようになるが,13世紀にパリで,大学の神学部の貧しい学生を対象に寄付で建てられた寮にこの名があてられた。…
…学部には,神学,法学(教会法,市民法),医学と,その予科的な学芸学部があったが,すべての大学が4学部全部をもっていたわけではない。また本来学生の寄宿舎であった学寮(コレギウムcollegium)が,後に大学の重要な構成単位となったイギリスの大学の例もある(カレッジ)。中世末期になると,大学での学問は当初の清新さを失ってしだいに硬直化するが,教育機関としての社会的役割は増大した。…
※「カレッジ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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