日本大百科全書(ニッポニカ) 「チシオタケ」の意味・わかりやすい解説
チシオタケ
ちしおたけ / 血潮茸
[学] Mycena haematopus (Fr.) Kumm.
担子菌類、マツタケ目キシメジ科のキノコ。小形で5~20本くらい束になって朽ち木の上に生える。高さ10センチメートル内外。傘は円錐(えんすい)形ないし鐘形で径2~3センチメートル、肉は薄く、帯褐紅色ないし帯赤紫色。傘には放射状の溝線があり、縁はぎざぎざになっている。ひだは白っぽい。茎は径1~3ミリメートルで細く、やや軟骨質。胞子紋は白。キノコに傷をつけると血紅色の液がにじみ出るのでこの名がある。これに似るアカチシオタケM. crocata (Fr.) Quél.は、傘が灰黄色、茎は橙黄(とうこう)色、傷つけると鮮やかなオレンジ色ないし朱黄色の液を出す。いずれも美しいキノコで、クヌギタケ属Mycenaに属する。この属は落ち葉、枯れ木などを腐らせるキノコの仲間で、種類は豊富だが、いずれも小形で、食用の対象にはならず、研究もきわめて遅れている。しかし、モリノカレバタケ属Collybia、ホウライタケ属Marasmiusなどとともに、森林生態系における物質循環のうえでは重要な役割を果たす菌である。
[今関六也]