改訂新版 世界大百科事典 「チャンカイン」の意味・わかりやすい解説
チャン・カイン (陳煚
)
Tran Canh
生没年:1218-77
ベトナムのチャン(陳)朝の太宗。在位1225-58年。リ(李)朝恵宗の外戚,輔国太尉チャン・トア(陳承)の次子。リ朝の衰退に乗じて勢力を得たチャン・トアの弟チャン・トゥ・ド(陳守度)の策謀によって即位し,リ朝に代わってチャン朝を開いた。チャン・トゥ・ドは殿前指揮使として禁軍を掌握した後,恵宗に迫って位を6歳の次女昭聖公主に譲らせ,即位して昭皇となった幼女に同年の甥カインを祗侯正として入侍させた。そして昭皇が戯れにカインに檳榔巾(びんろうきん)を投げ与えたのを口実に二人を結婚させ,次いで昭皇に譲位の詔を発布させてカインを帝位に就けた。治世の前半は,チャン・トゥ・ドが太師統国として摂政に任じ,前朝の諸例を改革したが,太宗の親政期においても,儒学を振興して中国的文事に厚い安定した政治が行われた。在位中,中国南部やチャンパに親征したほか,1257年の第1次元寇には楼船に乗って元軍を撃退するなど,軍事にすぐれた一面もあった。長子チャン・コアン(陳晃)に譲位後も,没年まで国政にかかわり,チャン朝の基礎を固めた。
執筆者:川本 邦衛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報