日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディヤウス」の意味・わかりやすい解説
ディヤウス
でぃやうす
Dyaus
古代インドの天空の神。インド最古の聖典『リグ・ベーダ』において、「父なる天」と尊敬を込めて呼びかけられているが、独立のディヤウス讚歌(さんか)はなく、母なる大地の女神プリティビーと対(つい)をなして崇拝されている。ディヤウスという語は、「輝く」という意味の語根div-から派生し、ギリシア神話のゼウスに対応するとされるが、ギリシアにおいてゼウスが至高の地位を保ったのに対し、ディヤウスは神界の王座を占めたことはなく、すでに『リグ・ベーダ』の時代に「閑(ひま)な神」deiotiosiとなっていたと考えられる。後代、ますますその重要性を失った。ディヤウスは暁紅(ぎょうこう)神ウシャスの父とされ、慈父として万物を保護し、また牡牛(おうし)に例えられる。
[上村勝彦]