日本大百科全書(ニッポニカ) 「デフ・シアター」の意味・わかりやすい解説
デフ・シアター
でふしあたー
Theatre of the Deaf
聾(ろう)者(聴覚障害者)の俳優による演劇およびその劇団。手話を使って上演する、聾者観客のための演劇の試みは多いが、1967年にアメリカの聾学校ガロデット大学の卒業生を中心にアメリカ・デフ・シアターThe National Theatre of the Deafが結成された。聾者の優れた全身表現能力を生かした新しい演劇の創造を目ざし、手話や身ぶりを芸術の域に高め、「空間の彫刻」ないし「見える音楽」にも例えられる視覚言語を開発、これに健聴者俳優の音声表現を交えることにより健聴者観客をも対象とする職業劇団として成功、世界各地を巡演して大きな刺激を与え、各国にデフ・シアターを発足させる原動力になった。79年(昭和54)の来日公演は日本各地に聾者の劇団が生まれるきっかけとなり、そのなかで80年に設立された日本ろう者劇団が取り組んだ手話狂言は87年に芸術祭賞を受賞、海外公演も行っている。
[鳴海四郎・一ノ瀬和夫]