改訂新版 世界大百科事典 「デルタ計画」の意味・わかりやすい解説
デルタ計画 (デルタけいかく)
Deltaplan
オランダ南西部のデルタ地帯の洪水を防ぎ,安全を確保する計画。1953年2月1日夜の嵐で,ライン,マース(ムーズ),スヘルデ三大河のデルタ地帯は堤防の決壊による大洪水に襲われ,浸水地域15万ha,死者1835名など甚大な被害を受けた。被災直後設けられたデルタ委員会はロッテルダム,アントワープ両港への通路を残してデルタ地帯の島と島のあいだを堤防で締め切ることを勧告し,1958年デルタ法が可決され,計画の実施と予算が決定された。デルタ工事Deltawerkは約20年の歳月を費やしてほぼ完成された。締切り堤防の内側では護岸堤防が不要となり,海は淡水湖に変えられた結果,夏季における農業用水,飲料水の不足は解消され,塩害が減少して農産物,牧草の収穫量は増大した。さらに,締切り堤防上に設けられた高速道路と内海への架橋は,孤立して後進的であったデルタ地帯の工業を急速に発達させ,広い湖と浜辺はオランダ西部の都市地帯住民のレクリエーション地域となった。
執筆者:栗原 福也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報