土壌中や空中の塩分によって、農作物や建造物、施設などが被害を受けること。土壌中の塩分の濃度が高くなるために生ずる塩土害と、強い風によって海水の飛沫(ひまつ)が吹き上げられて内陸に運ばれることによる塩風害または潮風害に大別される。塩土害のうち干魃(かんばつ)のときに地中の塩が地表に析出して栽培されている農作物に被害を与えることを旱塩害(かんえんがい)といい、耕地の農作物が直接海水に浸されたり、海水をかぶる場合を塩水害という。塩風害は強風にのって多量の海塩粒子が運ばれ、植物、農作物を枯らしてしまう。送・配電線の場合は、海塩粒子から析出したカルシウム塩が硫酸ミストと化合して石膏(せっこう)となり、碍子(がいし)の絶縁機能を低下させることによって停電などの被害を起こす。塩分が植物や送電線に付着した直後に強い雨が降ると被害は減少する。海岸地方ではアルミニウム建材やテレビアンテナの被害などがみられるようになった。また1983年(昭和58)ごろから、北海道、東北地方などの日本海側を中心に、塩害の新しい形として海岸沿いのコンクリート製橋脚に傷みが目だち始めた。鉄筋コンクリート骨材用の砂は、川砂がおもに使用されていたが、その払底に伴い海砂を洗浄して使うことが多くなり、コンクリート強度劣化等がおこる例が発生している。
また、日本海沿岸の降雪地帯では、冬季北西の季節風によって多量の海塩粒子を含んだ雪が内陸部にまで運ばれ、送電線や碍子に付着して絶縁機能の低下による停電やフラッシュオーバーを起こすことがある。この現象は塩雪害(低温季塩害)といわれ、冬季の電力送配電の障害となっている。塩害を防ぐ対策としては、耐塩害電気設備の開発、天気予報の活用による有効な対策の樹立、防風林・防潮林の設定などがある。
[安藤隆夫・半澤正男]
大気や水に多量の塩分を含むために生ずる害の総称。海上の波頭が砕けると塩水滴が空中に飛び出し強風で陸上に運ばれ,塩風害が発生する。沖縄などでは降雨の少ない風台風で農作物が塩風害を受けるので,島のまわりに防潮林が植えられている。東京や横浜でも台風一過被害が少なかったと安心していると庭の木がすべて真っ赤に枯れてしまうことがある。冬の季節風や低気圧による場合は塩雪害と呼ばれる。塩害は植物だけでなく,金属類の腐食を早める。また送電線や変電所では多くの電気絶縁用の碍子(がいし)が使用されているが,これらに付着した塩分がその後強い雨で流されず,弱い雨で濡れると絶縁不良となり,スパークして大停電の原因となる。台風時には内陸数十kmに被害が及ぶことがあるが,ちりに混じったもっと細かい海塩粒子が長い時間をかけて絶縁をそこなうこともある。また海水が干拓湖に侵入したり,インダス川のように岩塩が溶けて地面に残留すると地表面が農作に不適となる。このような害は塩水害と呼ばれる。
執筆者:中島 暢太郎
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(2018-10-18)
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