デンビーフリント文化(読み)デンビーフリントぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「デンビーフリント文化」の意味・わかりやすい解説

デンビー・フリント文化 (デンビーフリントぶんか)

アラスカ西部のノートン湾に突出するデンビーDenbigh岬に位置するイヤタエトIyatayet遺跡の調査により,J.L.ギディングスが定義した石器文化。現在は極北小型石器伝統(前2300-前1000)の重要な構成要素の一つと考えられている。この文化の特徴的遺物は細石核,細石刃,ビュラン,ビュラン・スポール,植刃,銛頭,スクレーパーなどである。とくにビュラン・スポールは縁辺に二次調整が加えられており,小型石器として使用されたことを物語っている。伴出した獣骨の分析によると,海獣狩猟と内陸のカリブー狩猟が主要な生業活動であった。そして,文化要素はシベリアの先史文化との関連を示唆するとともに,北アメリカのアーケイック文化との関連も示している。極北小型石器伝統は南西アラスカやアラスカ半島から,北極海沿いに,北アラスカ,カナダの北極海諸島,グリーンランドまで広く分布する。この分布域が歴史時代のエスキモーの分布地域とほぼ重なるため,エスキモー文化の最古層を表すものと解釈され,エスキモー文化の起源を示すものとされてきた。極北小型石器伝統は,前1000年ころ,つぎのノートン伝統へと発展してゆく。最近,極北小型石器伝統よりも古い,海への適応に特徴づけられるオーシャン・ベイOcean Bay伝統が南アラスカで明らかにされ,エスキモー文化の起源と両伝統との関係が論議されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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