改訂新版 世界大百科事典 「アーケイック文化」の意味・わかりやすい解説
アーケイック文化 (アーケイックぶんか)
北アメリカ東部地方で,沖積世の,現在とほぼ同じ自然環境を背景に発展した先史文化の総称。パレオ・インディアン文化とウッドランド文化の間に位置づけられ,年代は前8000年から前1000年の間である。アーケイックArchaic文化は北アメリカ東部の森林,河川流域,海岸地域における狩猟,採集,漁労などの多様な生業活動に特徴づけられる。主要な文化要素には,森林に対処するための石斧や楔,植物性食料を処理するための石臼,石皿,すり石,石製容器などの大型の石器が多い。そのほか石器には,磨製ナイフやポイント(尖頭器),打製のスクレーパー,ドリル,ポイントなど,狩猟活動を示唆する道具がある。なかでもポイント類は小型化し,その形態も木の葉形,有茎,抉(えぐ)り入りなどがあり,弓矢の発達とともに狩猟対象の動物の多様化を示唆している。簎(やす)などの骨角器,石錘,貝製装飾品など,漁労活動,貝の採集を示す遺物もある。また,自然銅やアスファルトなども利用され,自然銅は鍛造技法により各種の副葬品に加工されていた。この時期の後期(前2000-前1000)になると,胎土に繊維をふくむ土器が南東部に現れるが,その起源については不明の点が多い。ダルトン文化,オールド・カッパー文化,インディアン・ノル文化,スリー・マイル文化などが各地で確認されており,地域的特徴を強く示している。
執筆者:小谷 凱宣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報