日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥピナンバ」の意味・わかりやすい解説
トゥピナンバ
とぅぴなんば
Tupinambá
南アメリカ、ブラジルのアマゾン河口からサン・パウロ州までの海岸部と内陸部に広く住んでいたトゥピ系の先住民。狭義のトゥピナンバ、トゥピニキンなど数多くの下位集団に分かれていた。ポルトガル人がブラジルに到達したときに初めて接触した先住民である。その後、ポルトガル人の圧迫から逃れてアマゾン川本流をたどって内陸部に移住したものも多い。有毒マニオクとトウモロコシを栽培し、狩猟、漁労、採集でそれを補った。村落は複数の大きな共同住宅が中央広場を囲んでできていた。村落や村落同盟は互いに潜在的敵対関係にあり、しばしば戦争を繰り返していた。戦争の捕虜は殺され食われたといわれている。他のトゥピ系集団と同じく、予言者に率いられて理想郷を求めてさまよう「千年王国運動」がしばしば起こり、ペルーにまで達した集団もある。白人との接触が早かっただけ伝統的社会・文化の崩壊が早く、純粋のトゥピナンバは残っていない。
[木村秀雄]