改訂新版 世界大百科事典 「トゲヤマネ」の意味・わかりやすい解説
トゲヤマネ (棘山鼠)
spiny dormouse
Platacanthomys lasiurus
齧歯(げつし)目ネズミ科トゲヤマネ亜科の哺乳類でインド南部に分布する。外形がヤマネに似るため,かつてはヤマネ科に近縁の独立の科とされていた。体長13~22cm,尾長7.5~10cm,体重75g前後。体が細長く頭部が小さいが,耳介が大きく,尾は基部1/4は短毛でうろこが見えるが,残りの部分には長毛がはえふさ状。背には針状毛を混生する。体の背面は明るい赤褐色,腹は灰色で尾は背よりも濃色。標高600~900mの岩の多い丘陵地帯や谷沿いの森にすみ,木のうろや岩の割れ目に葉とコケで巣をつくる。樹上生活者らしく,長くふさ状の尾は樹上を歩いたり跳んだりするときに,体のバランスをとる道具として役だつらしい。食物は果実,種子,穀類,根などである。生態などほとんど知られていないが,飼育下のものは日中は不活発で,手に乗せても恐れたり逃げようとしないが,好奇心からか指を軽くかんだりする。寿命は不明で,野外でとらえてきたものを20ヵ月飼育した記録がある。中国南東部とインドシナに近似のチュウゴクトゲヤマネ(ホソオトゲヤマネ)Typhlomys cinereusを産する。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報