日本大百科全書(ニッポニカ) 「トランスヨルダン」の意味・わかりやすい解説
トランスヨルダン
とらんすよるだん
Transjordan
旧パレスチナのヨルダン川東岸地域をさす。歴史的には大シリアの一部で、旧約聖書時代のギリアデ、アンモン、モアブ、エドムの地域にあたる。古来アジアとアフリカを結ぶ文明の十字路としての要所であり、フィラデルフィア(アンマン)やゲラサ(ジェラシュ)などのグレコ・ローマン型の隊商都市が栄えた。636年イスラム軍に征服され、ダマスカスに都を置くウマイヤ朝の支配下に入る。8世紀にアッバース朝が興り都がバグダードに移されるとさびれた。12世紀には十字軍の戦場となり、16世紀にオスマン帝国の属州の一部となって遊牧民の住む荒野のまま忘れられていた。メッカの太守フセイン・イブン・アリーのアラブの反乱(1916)を契機として、1923年5月フセインの息子アブダッラーを王とするトランスヨルダン首長国がイギリスの保護下に成立、現在のヨルダンの礎(いしずえ)となった。地勢はほとんどが砂漠か半砂漠である。
[塩尻和子]