改訂新版 世界大百科事典 「トレポネマ」の意味・わかりやすい解説
トレポネマ
Treponema
スピロヘータ目に属する小型スピロヘータの1属。体長は5~20μm,体幅は0.1~0.5μmで,細長い体は6~12個の螺旋回転をもち,活発な運動を行う。トレポネマ属には3種の病原種が含まれている。トレポネマ・パリズムTreponema pallidumは梅毒の病原体であり,トレポネマ・ペルテヌエT.pertenueは熱帯地方にみられる梅毒様疾患であるフランベジアの病原体であり,トレポネマ・カラテウムT.carateumは熱帯中南米にみられるピンタ(斑点病)の病原体である。これら3種の病原性トレポネマは形態的,血清学的によく似た近縁の種である。後天性の梅毒の感染は,トレポネマ・パリズムを含む病変部と,直接接触した皮膚または粘膜を介して起こる。先天性梅毒の場合は,母親から胎盤を介して胎児が感染する。トレポネマはすべてペニシリンに対して高い感受性をもっており,梅毒の治療にもペニシリンが用いられる。ペニシリンアレルギーがみられる場合には,テトラサイクリンかクロラムフェニコールが投与される。
→スピロヘータ →梅毒
執筆者:川口 啓明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報