斑点病(読み)はんてんびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「斑点病」の意味・わかりやすい解説

斑点病
はんてんびょう

主として葉に丸みを帯びた小さな淡褐色から褐色の斑点を生ずる病気。植物病原菌が植物の葉を侵すと、このような斑点を生ずることが多く、とくに発病の初期にはほとんどのものに斑点ができるので、多くの栽培植物で斑点病が記載されており、その数は120種以上に達する。病原菌の種類もきわめて多岐にわたっており、不完全菌類22属、子嚢(しのう)菌類7属、鞭毛(べんもう)菌類1属である。不完全菌類ではセルコスポラCercospora属によるものがもっとも多く、野菜類、草花類、庭木類など39種の植物に発生する。しかしながら経済的に重要なものは少なく、薬剤散布など防除の必要なものはセロリ斑点病(病原菌Cercospora apii)である。

 ついで、フィロスティクタPhyllosticta属によるものが多く、ツツジ類など19種の作物に発生する。またセプトリアSeptoria属によるものはレタスなど9種の作物に発生する。このほかの属によるもので、被害が大きく重要なものは、Alternaria dianthi寄生によるカーネーション斑点病、Stagonospora curtisiiによるスイセン斑点病、Stemphylium lycopersiciおよびS. solaniによるトマト斑点病などである。子嚢菌類ではCochliobolus sativusによるオオムギコムギの斑点病が発生が多く重要である。なお、細菌類の寄生によっても斑点を生ずるが、これらは斑点細菌病と称し区別している。

[梶原敏宏]

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飼料作物病害図鑑 「斑点病」の解説

斑点病(トウモロコシ)

雌穂の包葉で発生することが多い斑点性の糸状菌病。病斑は初め緑色の色あせた小点だが、後に褐色ないし紫褐色となり、直径2ー5mmの円形または楕円形の病斑となる。病斑は融合して不定形となり、表皮を破れば中には休眠胞子があり、粉状を呈する。この罹病組織が地面に落ちて越冬し、翌年胞子が発芽して遊走子を出してまん延する。病原菌はごま葉枯病菌と同様にOレースとTレースがあるが、日本では未確認である。

斑点病(ライグラス)

全国で発生する斑点性の糸状菌病。病斑は黒褐色、楕円形〜円形、周囲がしばしば黄化し、長さ5〜15mm 、幅3〜7mmとなるのが典型であるが、実際は病斑は融合して不定形になることが多く、何となく斑点が出ているような感じになることもある。このため病斑が区別しにくく、抵抗性育種などの対応が遅れている。病原菌は、オーチャードグラスフェスク等の斑点病菌とは同属だが、別種

斑点病(ブロムグラス)

葉に斑点を形成する糸状菌病。病斑は初め褐色の小点あるいは短い線状であるが、徐々に拡大して褐色、楕円形〜紡錘形、長さ0.2-3cm、幅 0.1-1cmの病斑になる。病斑の大きさは非常に変異が大きい。病原菌はフェスク斑点病菌、ライグラス夏斑点病菌と同種であるが、寄生性の点でも同じか どうかは明らかではない。寄主範囲は広い。

斑点病(フェスク)

主にメドウフェスクで発生する糸状菌病。病斑は初め褐色の小点あるいは短い線状であるが、徐々に拡大して褐色、楕円形〜紡錘形、長さ0.2-3cm、幅0.1-1cmの病斑になる。病斑の大きさは非常に変異が大きい。病原菌はライグラスの夏斑点病菌と同種であるが、両者が寄生性の点でも同じかどうかは明らかではない。寄主範囲は広い。

斑点病(チモシー)

北部及び高冷地で最も一般的なチモシーの斑点性病害。春から秋にかけて発生するが、夏に最もまん延する。初め紫黒色の小点であるが、後に中央部灰白色、周縁部紫黒色の円形病斑となる。病斑の大きさは直径2ー3mm程度だが、多発すると葉先から巻き上がるように枯れる。病原菌はチモシーにのみ寄生する。

斑点病(パラグラス)

1998年3月に沖縄県石垣市の草地で発生を確認した。病徴は初め葉身上の褐色小斑点であるが,後に拡大して周縁部褐色, 中心部黄褐色,長楕円形から紡錘形,大きさ0.5-2×0.1-0.5cmの斑点となる。病勢が進むと病斑が融合して不整形となり,周縁に黄色のハローが 形成される。

斑点病(ライムギ)

主に葉に発生する斑点性の糸状菌病。初めは水浸状の斑点であるが、徐々に拡大し、淡褐色、紡錘形、長さ0.5-1cmの大型病斑となる。これが後に融合して、葉全体を枯らす。秋に幼植物に発生すると被害が大きい。病原菌はいわゆるヘルミントスポリウム菌で、宿主範囲は広い。

斑点病(テオシント)

葉および葉鞘に発生する糸状菌病。病斑は褐色から紫褐色、直径2ー5mmの円形から楕円形で、葉鞘や葉の中肋などに多数発生する。病斑は少し盛り上がり、やがて相互に融合して大型の不定形斑となる。病斑の表皮を破ると、内部は銹色でやや粉状を示す。

斑点病(アカクローバ)

主に葉と葉柄に発生する斑点性の糸状菌病。葉では葉脈に仕切られた灰褐色の病斑となり、互いに融合して葉を枯らす。葉柄に発生すると紫褐色の条斑となり、被害はさらに大きくなる。病原菌は他のクローバ類も侵すが、寄生性は若干分化しているとされる。

斑点病(シロクローバ)

主に葉と葉柄に発生する斑点性の糸状菌病。葉では葉脈に仕切られた灰褐色の病斑となり、互いに融合して葉を枯らす。葉柄に発生すると紫褐色の条斑となり、被害はさらに大きくなる。病原菌は他のクローバ類も侵すが、寄生性は若干分化しているとされる。

斑点病(クリムソンクローバ)

主に葉と葉柄に発生する斑点性の糸状菌病。葉では葉脈に仕切られた灰褐色の病斑となり、互いに融合して葉を枯らす。葉柄に発生すると紫褐色の条斑となり、被害はさらに大きくなる。病原菌は他のクローバ類も侵すが、寄生性は若干分化しているとされる。

斑点病(アルサイククローバ)

主に葉と葉柄に発生する斑点性の糸状菌病。葉では葉脈に仕切られた灰褐色の病斑となり、互いに融合して葉を枯らす。葉柄に発生すると紫褐色の条斑となり、被害はさらに大きくなる。病原菌は他のクローバ類も侵すが、寄生性は若干分化しているとされる。

斑点病(サブタレニアンクローバ)

主に葉と葉柄に発生する斑点性の糸状菌病。葉では葉脈に仕切られた灰褐色の病斑となり、互いに融合して葉を枯らす。葉柄に発生すると紫褐色の条斑となり、被害はさらに大きくなる。病原菌は他のクローバ類も侵すが、寄生性は若干分化しているとされる。

斑点病(オーチャードグラス)

北海道で発生する糸状菌病。葉に楕円形から紡錘形、大きさ2-3×0.5-1mmの斑点を形成する。病斑は初め紫褐色であるが、後に中央部が灰色に枯れ、ここに白色綿毛状の菌糸を生じる。病斑表面に形成された分生胞子が飛散して、まん延する。

斑点病(ベルベットグラス)

葉に斑点を形成する糸状菌病。病斑は赤褐色から黒褐色、楕円形、大きさは3-7×1-3mmである。病斑の中央部は色が濃く、周縁部は薄いため、外縁はやや不鮮明になる。病斑周囲には黄色のかさを生じ、病斑は融合して葉全体を枯死させる。

斑点病(レッドトップ)

葉枯を引き起こす糸状菌病。病斑は初め褐色の小点だが、後にオリーブ灰色に変わり、周囲には黄色から黄土色のハローが形成される。発生後期には病斑は中央部から次第に灰白色に枯れ、相互に融合して葉枯を引き起こす。

斑点病(バミューダグラス)

2003年10月に鳥取市で発生した新病害。葉に斑点を形成する糸状菌病。病徴は葉身および葉鞘に、楕円形から紡錘形、褐色〜紫褐色、大きさ2-8×1-2mm程度の病斑を形成する。多発すると株全体が枯れ上がる。

出典 畜産草地研究所飼料作物病害図鑑について 情報

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