日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドル化」の意味・わかりやすい解説
ドル化
どるか
dollarization
もともと自国の通貨が存在していた国で、アメリカ・ドルが事実上の代替通貨となること。戦争後の混乱、内紛、政治体制の崩壊、経済・金融危機などで自国の中央銀行の機能が十分に働かなくなった際、預金、決済、賃金支払い、納税などに基軸通貨であるアメリカ・ドルが使われることを意味する。国家が経済・金融体制を安定させるため、ドル化を法的に認める場合もある。国内経済のアメリカ依存が極端に強まり、アメリカ経済に連動してインフレが進むほか、独自の金融政策をとれないなどの欠点もある。
冷戦終結後、社会主義国などが市場経済化やドルの自由化に踏み切り、信用力の強いドルが無制限に各国に流入した。このため旧ソ連(ソ連解体後はロシアなど)やキューバ、ベトナムなどでは日常の経済活動がドルで決済されるようになり、1国2通貨体制の弊害が目だった。
また、通貨危機に瀕(ひん)したブラジルやアルゼンチンは1990年代に事実上のドル化政策を実施した。2000年以降、経済危機から脱するため中南米のエクアドル、エルサルバドル、グアテマラなどは自国通貨をドルに置き換えるドル化政策を採用して経済の安定を目ざした。最近では、イラク紛争後、多国籍軍が駐留したイラクで大量のドル紙幣が流通し、イラク政府はドル化防止に懸命となっている。
[編集部]