アメリカとその同盟国が自国の国益に沿って編成したアメリカ主導の合同軍。派遣軍の編成にあたっては、その正当性を国連に求め、軍事介入に資するため成立を図った安全保障理事会決議の実効性を確保することを名目にしているが、もとより国連軍United Nations Forceではない。国連軍は国連憲章第7章42条、43条の規定により「国際の平和および安全の維持または回復」のため、安保理決議に基づいて派遣され、指揮系統や兵力の運用などが安保理メンバーで構成される軍事参謀委員会のもとに一元化される。これに対して多国籍軍は、参加国自らの責任で派遣されるもので、指揮系統なども国連とは無関係である。
1990年、イラクのクウェート侵攻に端を発した湾岸戦争で派遣された多国籍軍は、対イラク経済制裁などの安保理決議の実効性確保を名目に、アメリカが同盟国や友好国に軍事的・財政的協力を強く求め、アメリカ軍50万人を中核にイギリス、フランスのほか湾岸諸国、エジプト、シリアなど28か国、計約70万人が加わった。日本政府は、人的支援は憲法上できないとしながらも、後方支援のための自衛隊の派遣を画策したが果たせず、総額130憶ドルの財政支援と海上自衛隊掃海部隊のペルシア湾派遣を行った。
また1992年12月、ソマリアでも湾岸と同じようにアメリカ主導の多国籍軍を編成した。こうした地域紛争を武力で解決しようとするアメリカのやり方には、「軍事大国の横暴」「武力による平和の押し売り」として国際世論の厳しい批判がある。
[奥野保男]
『川上洋一著『国連を問う』(1993・NHKブックス)』▽『河辺一郎著『国連と日本』(岩波新書)』▽『最上敏樹著『国連システムを超えて』(1995・岩波書店)』
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一般的には複数国の合同軍を意味するが,歴史的には1991年の湾岸戦争時の多国籍軍が有名。これにはアメリカを中心とする西側諸国やアラブ諸国が参加し,国連安全保障理事会の武力行使容認決議にもとづき,対イラク軍事行動を実施した。
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