改訂新版 世界大百科事典 「ナンマドール」の意味・わかりやすい解説
ナン・マドール
Nan Madol
オセアニア最大の巨石遺跡。西太平洋,ミクロネシアのポナペ島に隣接するテムウェン島沿岸のサンゴ礁上に構築された92個の人工島にある。整然と配置された人工島は水路によって結ばれている。高さ1~2m,広さ370~8400m2の人工島は,周囲にポナペ島から運んだ柱状玄武岩を積み,内側をサンゴ礫や砂で埋め立てている。最大の遺跡はナン・タウアスで,高さ4~7mの巨大な柱石を積み重ねた二重の郭壁があり,中央に石室をもつ壮大な建造物である。伝承によれば,ここはポナペ島の政治,宗教の中心地として13~15世紀ころに栄えたのち,西欧文明との接触以前に廃虚と化した。遺跡全体は,宗教をつかさどる僧侶たちの住んだ東部と支配者階級の住んだ西部とに区分されていた。20世紀初めドイツの探検隊が調査測量を行ったのち,1970年末に開始された考古学調査によって,この遺跡は実際にはポナペ島の一部を含むさらに広範囲にわたるものであることが判明した。多量の土器片も発見され,今後の調査が期待される。
執筆者:篠遠 喜彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報