石室(読み)せきしつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

石室
せきしつ

墳墓の埋葬施設の一種で,石材を積んで造った室をいう。日本の古墳の場合,遺体を納めたのち上部をふさいでしまうものと,一方の壁あるいはその壁の一部を開けられるようにして外部とつないでいるものとの2種がある。前者を竪穴式石室,後者を横穴式石室という。後者は入口を閉鎖したあとからの追葬も可能である。石室の小さなもののなかには石と区別のつかないものもある。石積みの様子によって,名称の区分がつけられていて,各面を加工した石をきちんと積上げてあるのを切り石積みの石室,大小さまざまの石を一見乱雑に積んだものを乱石積み,割り石を積んだものを割り石積みなどという。

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デジタル大辞泉の解説

いし‐むろ【石室】

岩間の天然のむろ。また、岩石でつくったむろ。せきしつ。いわむろ。
石を積み、または岩を利用してつくった山小屋。
霊屋(たまや)の中に安置する石造り厨子(ずし)。

せき‐しつ【石室】

岩のすき間を利用した天然のほら穴。また、石で造った部屋。いしむろ。
古墳の、石で壁や天井をつくった墓室。竪穴(たてあな)式石室横穴式石室がある。

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世界大百科事典 第2版の解説

せきしつ【石室】

石で作った室を意味するが,おもに埋葬施設をさすときに用いる。その場合,原則的には,遺体を直接入れる容器を〈棺〉,棺を収めるもので,単次葬用に作られ,大きさも棺によって規定されるものを〈槨(かく)〉,そして,棺とは直接関係しない広い空間と通路をもち,複数の棺(遺体)を順次追葬(複次葬)することのできるものを〈室〉と呼びわけるべきであるが,3者を厳密に区別することは困難な場合が少なくない。したがって,これらの用語は混用されることが多く,石室は火葬墓蔵骨器経塚経筒を収納する石組みなどを呼ぶのにも用いられる。

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大辞林 第三版の解説

いしむろ【石室】

石を積んで作った部屋。いわむろ。岩屋。
登山で、洞穴を利用したり、石を積んだりして作った避難小屋。
古墳の埋葬するための部屋の俗称。
霊屋たまやの中に安置する、位牌いはいを納めた石造りの厨子ずし

せきしつ【石室】

石で造った室。また、岩をうがって造った室。いわむろ。いしむろ。
墳墓の内部に、周りを石で囲んでつくった墓室。棺や副葬品を保護するための施設で、竪穴たてあな式と横穴式とがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

石室
せきしつ

自然石または加工石材を用いて積み上げた墓室をいう。内部に棺や副葬品を納める構築物であるが、小形の例では直接遺骸(いがい)を納めるなどの場合もある。日本古墳時代の石室には大別して2種がある。一は棺を安置したのちに、その周囲の四壁に主として割石(わりいし)などを積み、最後に上部に天井石を架する竪穴(たてあな)式石室であり、他は周囲三壁および天井をつくり、埋葬後に入口となる一壁を閉じる横穴式石室である。竪穴式石室はおもに4世紀から5世紀にかけてつくられ、横穴式石室は5世紀に大陸から伝えられて、その後6世紀以降に盛んにつくられた。のちには巨大な自然石使用石室、切石(きりいし)積みの精緻(せいち)な石室もつくられるようになる。九州を中心とする地域の装飾古墳はこの横穴式石室にみられ、その形態を継ぐ横穴にも及んでいる。[伊藤玄三]

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精選版 日本国語大辞典の解説

いし‐むろ【石室】

〘名〙
① 天然の岩屋を利用したり、石を積んだりして造った小屋。岩屋。
※滑稽本・滑稽富士詣(1860‐61)四「登りつめたる頂上の、やくし十二の石室に、着てはいとどものすごく」
岩石を積んで造った古代人の墳墓、または民間信仰の神をまつった石造りの室。せきしつ。
※山吹日記(古事類苑・礼式三〇)「家居のうしろの山際にいしむろあり。南に向ひて入口の高さ五尺余り、横三尺あまり、〈略〉うへもめぐりも、きはなき石もてたためる也」
③ 位牌(いはい)をおさめて、霊屋(たまや)の中に安置する石造りの厨子。〔色葉字類抄(1177‐81)〕

せき‐しつ【石室】

[1] 〘名〙
① 岩の間にできた、または岩をうがって造った室(むろ)。いわむろ。いわや。
※文華秀麗集(818)中・和武蔵平録事五月訪幽人遺跡之作〈藤原冬嗣〉「風度松門寂、泉飛石室凄」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)雲岸寺「妙禅師の死関、法雲法師の石室をみるがごとし」 〔史記‐太史公自序〕
② 石またはコンクリートで造った建物の部屋。また、その建物。〔和英語林集成(初版)(1867)〕
※東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉三「園の中央に石室有り、停車場と曰ふ。石を鏤めて而して柱と為し、石を磨ひて而して壁と為し、精巧美麗」
③ 遺骸を入れた棺や副葬品を納めた、古墳内部の石の墓室。古墳時代の前期・中期(四~五世紀)には竪穴式石室がつくられたが、後期(六~七世紀)には大陸文化の影響により横穴式石室が採用されるようになった。
④ 書庫。
※性霊集‐五(835頃)与越州節度使求内外経書啓「石室難見、貝葉聞者、路険之所致也」 〔張九齢‐酬趙二侍御使西軍贈両省旧僚之作詩〕
[2] 鎌倉時代から室町初期の臨済宗の僧。諱(いみな)は善玖。筑前(福岡県)の人。元に渡って古林清茂に学び、帰朝後、南禅寺・天龍寺、のち足利基氏に請われて円覚・建長両寺に住した。五山文学興隆の基礎を築いた。永仁二~康応元=元中六年(一二九四‐一三八九

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世界大百科事典内の石室の言及

【墳墓】より

…また,崖や斜面にうがった横穴(よこあな)やそれに続く墓室(中国後漢代の崖墓(がいぼ),日本古墳時代の横穴),垂直に掘り下げてから水平方向に掘った横穴(南ロシア青銅器時代の地下式横穴墓,宮崎・鹿児島県の地下式横穴),地下の坑道の壁面にうがった横穴(ローマの初期キリスト教徒の墓所であるカタコンベ)に納めることもある。石,塼(せん),木などで構築した墓室内に棺を納めることも多い(石室塼室墓)。墓室の中にあって棺を包みもつ構造を槨(かく)という。…

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