ナーガーナンダ(読み)なーがーなんだ(その他表記)Nāgānanda

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナーガーナンダ」の意味・わかりやすい解説

ナーガーナンダ
なーがーなんだ
Nāgānanda

古代インドの王で劇作家でもあるハルシャバルダナ作の五幕のサンスクリット仏教劇。「竜王の喜び」と訳される。五幕からなり、ビディヤーダラ人の王子ジームータバーハナは、シッダ人の王女マラヤーバティーを愛して結婚する(第三幕まで)。王子は竜王の危難を救うため、仏教的犠牲精神により、自ら鳥の王ガルダの餌食(えじき)となるが、ガウリー女神の神力によって、すでに死んだ竜族とともに蘇生(そせい)し、王者使命を全うする。

[田中於莵弥]

『原実訳『世界古典文学全集6 ナーガーナンダ』(1966・筑摩書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語 筑摩書房

世界大百科事典(旧版)内のナーガーナンダの言及

【ハルシャ・バルダナ】より

…その一人バーナは,王の功績をたたえる《ハルシャチャリタHarṣacarita(ハルシャ王の治績)》を著した。王自身もまた文豪として知られ,戯曲《ナーガーナンダNāgānanda(竜王の喜び)》をはじめ幾編かの作品を今日に伝えている。王はシバ派のヒンドゥー教徒であったが,のちに仏教も信奉し,仏教教団に惜しみない援助を与えた。…

【仏教音楽】より

…これは音楽劇(ナーティヤnāṭya)の主要部分をなすものであるが,別にヌリティヤと呼ばれる仮面劇が独立に存在したとも考えられている。現在残されている仏教劇の戯曲台本としては,馬鳴(めみよう)の《舎利弗劇(シャーリプトラ・プラカラナ)》,および作者不明の2仏教劇の断片が初期の戯曲としてあり,また7世紀のハルシャ・バルダナの《竜王の喜び(ナーガーナンダ)》が有名である。いずれも戯曲作法にかなって構成されているので,音楽においても,《戯曲論書(ナーティヤ・シャーストラ)》第28章以下に楽理が説かれる,ガーンダルハ音楽が適用されたと想像される。…

※「ナーガーナンダ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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