滋賀県中南部、蒲生郡(がもうぐん)にある町。1955年(昭和30)鏡山、苗(なえ)の2村が合併して町制施行。町名は、両方の村に竜王山という同名の山があったことによる。水口(みなくち)丘陵北西部の丘陵と日野川南岸の平野からなる。町の北西端を国道8号(中山道(なかせんどう))が通じ、旧宿場の鏡集落があり、また中央部を名神高速道路が走り竜王インターチェンジがあり、国道477号が南北に通じる。古墳や銅鐸(どうたく)出土地があり、なかでも鏡山中腹から鏡・須恵(すえ)集落にかけての傾斜地には多くの須恵器の窯跡が分布し、『日本書紀』垂仁(すいにん)紀にみえる新羅(しらぎ)王子天日槍(あめのひぼこ)の従者の「近江(おうみ)国鏡谷の陶人」の居住地と推定される。このほかにも古代手工業関係の地名が多く、渡来人などによる革新的な文化が存在したと考えられる。水田農業と近江牛産地として知られるが、竜王インターチェンジの開設により工場が増加し変貌(へんぼう)を遂げた。苗村(なむら)神社西本殿(国宝)のほか、勝手神社本殿、鏡神社本殿など国指定重要文化財が多い。杉之木神社で行われるケンケト祭り長刀振(なぎなたふ)りは重要無形民俗文化財。面積44.55平方キロメートル、人口1万1789(2020)。
[高橋誠一]
『『竜王町史』上下(1983、1987・竜王町)』
山梨県中部、中巨摩郡(なかこまぐん)にあった旧町名(竜王町(ちょう))。現在は甲斐(かい)市の南部を占める地域。1956年(昭和31)竜王、玉幡(たまはた)の2村が合併して町制施行、2004年(平成16)敷島(しきしま)町、双葉(ふたば)町と合併、市制施行して甲斐市となる。旧竜王町域は、釜無川(かまなしがわ)が甲府盆地に流れ出る東岸を占め、かつては釜無川氾濫原(はんらんげん)で、治水のためにつくられた堤防、信玄堤が残る。JR中央本線、国道20号、52号が通じる。昭和30年代ごろまでは米麦、養蚕を主体とする農村であったが、近年は果樹・野菜栽培中心の都市近郊型農業へと転換。甲府市に隣接しているため急速に都市化が進行し、人口増加も著しい。かつての水田地帯には住宅が建ち並び、農家のなかには転業したり貸家業に転じたものも多い。また工場の増加も著しく県内ではまれな人口増加の町であった。
[横田忠夫]
『『竜王町史』(1976・竜王町)』
蛇形の鬼類である竜の王のことで,サンスクリットではナーガNāga。主として水中に住み,雲や雨を起こす神通力を持つと信じられる。仏教を守護する異類として八部衆の一つに数えられる。仏伝の中では,誕生した釈迦に対し虚空から清浄な水を頭上に注いだ難陀(なんだ)竜王,優波難陀(うばなんだ)竜王が著名である。これらはインドにおいて,蛇の頭部を冠として頭上に表す姿に表現するが,日本の涅槃(ねはん)図の中に表現される2竜王は,鼻が大きく身体に鱗をもつ中国風の竜を冠にする武将像である。《法華経》には,釈迦が同経を説いたとき列席して説法を聴いた8尊の竜王の名が説かれる。難陀,跋難陀(ばなんだ),娑伽羅(さから),和修吉(わしゆきつ),徳叉迦(とくしやか),阿那娑達多(あなばだつた),摩那斯(まなす),優鉢羅(うばつら)の8尊で,八大竜王と総称される。竜王を本尊として単独に造像することはほとんどないが,密教における祈雨の修法である請雨経法の本尊となる請雨経曼荼羅(まんだら)では,釈迦如来の侍者として八大竜王が描かれている。
→竜宮 →竜神
執筆者:関口 正之
滋賀県南部,蒲生(がもう)郡の町。人口1万2916(2010)。日野川の形成した平野の南部に位置する。古くから近江米,近江牛の産地として知られたが,近年は野菜,花卉,畜産などを取り入れた都市近郊農業を進め,観光梨園,ブドウ園もある。工業も盛んで,自動車,食品,繊維などの工場が立地する。北西端を中山道(現,国道8号線)が通り,鏡はその宿場であった。苗村(なむら)神社は旧苗村郷33ヵ村の総社で,国宝の西本殿をはじめ,多くの重要文化財をもつ。町の中央部を東西に走る名神高速道路に1981年竜王インターチェンジが開設された。
執筆者:松原 宏
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(村上耕司 朝日新聞記者 / 2007年)
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…《山海経(せんがいきよう)》に見える黄帝と蚩尤(しゆう)の戦争の神話に風,雷,雨,干ばつの神々が登場するが,黄帝の命を受けて参戦する〈応竜〉という翼のある竜は雨をつかさどる神である。竜王は古来雨神とされ,農民の雨乞いの対象となってきた。【鈴木 健之】。…
…船幽霊や海坊主は海の精霊であり,さらに各地の〈カゼ(風)〉も半ば精霊とみなされている。【佐々木 宏幹】 一般には水神の表徴である蛇信仰が中国の竜信仰と結びついた竜神の同意語として,竜宮・竜王などと呼ぶ場合が多い。海神を祭る神社の主要なものとして,宗像(むなかた)大社,住吉神社,大山祇(おおやまづみ)神社,金毘羅社などが全国的に勧請流布している。…
…竜は天帝の馬だとされ,逆に大きい馬が竜と呼ばれるのも,竜と馬との習合を示唆しよう。 仏教伝来にともない,仏法を守護する八部衆の一つとしての竜(竜王)が中国古来の竜と重なり合い,四海竜王の観念が中国に定着するのもそうした結果である。仏典の中では竜王が人間的に活躍するが,中国の小説や戯曲の中に竜王や竜女の物語が展開するのもまた,そうした外来文化の影響によったものであろう。…
…竜王の住む宮殿が原義であるが,転じて海中あるいは海上の楽園的な異郷をさし,また豪華な宮殿邸宅の形容にも用いられる。仏教においても,大海の底に娑竭羅(しやから)竜王の宮殿があって,縦広8万由旬(ゆうじゆん)(1由旬は帝王1日の行軍里程)もあり,七重の宮牆(きゆうしよう),欄楣(らんび)などはみな七宝をもって飾られているとか(《長阿含経》巻19),あるいは海上に白銀,瑠璃,黄金の諸竜宮があって,毒蛇大竜がこれを守護しており,竜王がここに住み珍宝が多いなどといわれている(《賢愚因縁経》)。…
※「竜王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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