呼吸,循環機能が著しく低下あるいは停止して生命の火が消えようとするとき,人工呼吸や心臓マッサージなどにより生き返らせて生命を救うことをいう。直接には心臓,肺,脳機能をよみがえらせるので,心肺脳蘇生法cardio-pulmonary-cerebral resuscitation(CPCRと略記)とも呼ばれる。蘇生は,事故,災害あるいは予期しない急病による心肺機能の危機に際して行われる。蘇生は必ずしも医療施設で医療従事者によって行われるとは限らない。一般社会でも時と場所を選ばずに蘇生を必要とする事態が起こりうる。心肺機能障害を起こす緊急事態として,溺水,感電ショック,薬物中毒,ガス中毒,痙攣(けいれん)発作,急性心筋梗塞(こうそく)などの急性心停止,気道閉塞,神経筋疾患による呼吸筋麻痺などが代表的な対象である。蘇生を実施する段階次のは二つに分けることができる。
現場での蘇生で,一般市民レベルに教育される内容である。呼吸機能障害や呼吸停止に対して直ちに処置をしなければならない。頸部を後ろに反らせたり,下顎をもちあげたりして気道を確保し,異物があればこれを除去する。気道が確保されても呼吸停止があれば,道具がなくても行える呼気吹込み人工呼吸を行う。救助者は口を大きく開けて,患者の口の周りにかぶせ,4~5秒に1回患者の胸がふくらむように息を吹きこむ。頸動脈の拍動が触れず,死人の様相を呈するときは,心拍停止を疑い,胸骨圧迫心臓マッサージ(非開胸心臓マッサージともいう)を開始する。毎秒1回胸骨を脊柱にむかって4~5cmひっこむように圧迫する。呼吸と心拍動の両機能が停止している際には,人工呼吸と心臓マッサージを交互に行う。救助者が1人の場合は,呼気吹込み人工呼吸2回,胸骨圧迫心臓マッサージ15回を交互に行う。救助者が2人いる場合は,1人は心臓マッサージを,他の1人は人工呼吸を担当する。心臓マッサージ5回ごとに人工呼吸を1回の割合で行う。現場での蘇生では,協力者を求めて速やかに救急医療システムへの連絡をとる。自発呼吸が再開し,1分間50回以上の脈拍を触れるまで蘇生は休まずに続けなければならない。
第2段階は救急車あるいは救急医療施設における蘇生で,この段階では,より効果的な蘇生が実施される。気管内挿管により気道を確保し,人工呼吸装置により高濃度の酸素を用いて有効な人工呼吸が行われる。心臓マッサージをより効果的に行うために手動式や自動式の心臓マッサージ器(いずれも患者の背中にさしこむ背板と心臓圧迫アームをもつ)を用いることがある。心電図,血圧などのモニターで循環を監視し,血液ガス測定で呼吸状態を評価する。心室細動には電気的除細動を行う。静脈路を確保し,必要な輸液と強心薬投与を行う。医療施設では心肺機能障害の原因も精密検査され,蘇生が成功してから後の回復期に治療される。
蘇生は,医療従事者だけではなく,だれもが一般市民として隣人の蘇生を行う機会があることから,その意義をよく理解し,国民的レベルでの教育普及が望まれる。
→応急手当 →人工呼吸 →心臓マッサージ
執筆者:田中 亮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…いずれにせよ,生命に危険がさし迫った状態であり,ただちに人工呼吸や心臓マッサージ,その他の救急処置を行わないと死に至ることが多い。このような状態から回復して,呼吸運動や心臓の拍動が認められるようになることを蘇生という。古くは,この仮死の状態を真の死亡と間違えて,いわゆる〈早まり埋葬〉の原因となったこともある。…
…臨終のときとか,急死の場合とかに死者の名を呼び蘇生(そせい)させようとする行為。魂呼ばいともいい,とくに若者や産婦の死のときに行われる。…
※「蘇生」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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