餌食（読み）エジキ

デジタル大辞泉

え‐じき〔ゑ‐〕【餌食】

１ 動物のえさとして食われる、命あるもの。
２ 野心や欲望のための犠牲となるもの。くいもの。「巨大資本の餌食となる」
３ 食物。食料。
「生き身には―あり」〈浄・博多小女郎〉
[類語]犠牲・償い・代償・いけにえ・好餌・捨て石・身代わり・人身御供・スケープゴート

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

え‐じきゑ‥【餌食】

1. 〘 名詞 〙
2. ① 食物。食料。
   1. [初出の実例]「よひものがきた、なんぢがやうなるものこそ、ふだんまって、それがしがやうなるものがゑじきにすれ」(出典：虎明本狂言・鬼の継子（室町末‐近世初）)
3. ② 鳥獣のえさとなる食物。または、えさとして食われるもの。えさ。
   1. [初出の実例]「唐櫃(からうと)のすみ、包、葛籠(つづら)の中へ取り籠りて、家を作り、ゑじきにもならず、手柄にもならざる物をくふことなかれ」(出典：御伽草子・猫の草紙（江戸初）)
4. ③ 他人の意志、欲望のままにされ、その犠牲となるもの。くいもの。
   1. [初出の実例]「今試に将棊の上手に採配とらせて軍(いくさ)させば、敵の龍馬(りゅうめ)に踏殺(ふみころされ)、桂馬の高飛歩兵の餌食(ヱジキ)となるべし」(出典：談義本・風流志道軒伝（1763）一)

餌食の語誌

( 1 )元来は、「衣類と食物」を意味する漢語「衣食(えじき)」であったが、次第に「食物」の方に意味がかたより、室町時代には①のような用法となった。この結果、「え」を「動物の食料」を意味する和語「え（餌）」と解釈し直したことで②の用法が成立し「餌食」と表記されるようにもなった。
( 2 )「え（餌）」はもともと「ゑ」で音が異なったが、中世では「え」「ゑ」の対立はすでになく、一音節語「え」が語としての安定を求めて多音節化していく過程で、このような混交が生じたと考えられる。江戸時代以降「動物の食料」を意味する語は「えさ」となったため、「えじき」はさらに③の意になり、現代にいたる。

じ‐しょく【餌食】

1. 〘 名詞 〙
2. ① ＝えじき（餌食）①
   1. [初出の実例]「此地湖海無しと雖も、魚亦自から土中に生じ、以て土人の餌食(ジショク)（〈注〉クヒモノ）に供ず」(出典：造化妙々奇談（1879‐80）〈宮崎柳条〉一三)
3. ② ＝えじき（餌食）②

え‐ばみゑ‥【餌食】

1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「えばむ（餌食）」の連用形の名詞化 ) 鳥獣、魚などがえさを食べること。また、そのえさ。
   1. [初出の実例]「ははとりかいごおあたたむれは、ちち鳥ゑはみにたつ」(出典：説経節・説経しんとく丸（1648）上)

出典　精選版 日本国語大辞典

デジタル大辞泉プラス

餌食

1979年公開の日本映画。監督：若松孝二、脚本：荒井晴彦、高田純、出口出。出演：内田裕也、多々良純、宮田明、栗田洋子、水島彩子、鹿内孝ほか。

出典　小学館