日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニセクロハツ」の意味・わかりやすい解説
ニセクロハツ
にせくろはつ / 偽黒初
[学] Russula subnigricans Hongo
担子菌類、マツタケ目ベニタケ科の毒キノコ。傘は径5~11センチメートル、初めまんじゅう形で、のちに浅い漏斗(ろうと)状となる。傘の表面はややビロード状で黒褐色。肉は厚く、硬く締まって白色だが、割って空気に触れると赤みを帯びる。ひだは厚くてまばら。淡いクリーム色で、傷つけると赤くなる。茎は3~6センチメートル×1~2.5センチメートルで淡灰褐色、硬いが砕けやすい。胞子はほぼ球形で無色。表面には微細ないぼと網目があり、大きさは7~9マイクロメートル×6~7マイクロメートル。夏から秋、シイ、カシなどの常緑広葉樹林に生える。日本特産種で、本州から九州に分布する。食菌のクロハツR. nigricans Fr.に似るが、区別は次の点でつけられる。クロハツの傘は初め白っぽく、のちに黒褐色に変わるほか、切断すると白い肉が赤から黒に変わる。これに対し、本種では、傘の色は初めから暗褐色、肉は赤く変わるが、黒くはならない。ニセクロハツによる中毒は、これまでに京都府と大阪府で3回あり、10人が食べて3人の死者を出している。クロハツに似たキノコは絶対に食べないという配慮が必要である。
[今関六也]