日本大百科全書(ニッポニカ) 「のろし」の意味・わかりやすい解説
のろし
火煙を放って外敵の侵入を急報するための施設。古代の「軍防令(りょう)」では、九州の大宰府(だざいふ)と京師(けいし)との間に約25キロメートルごとに烽(ぶう)(土布比(とぶひ)=飛火)を設け、これに烽長(ぶうちょう)・烽子(ぶうし)を配置し、鉄製の籠(かご)の上に置いた火炬(かこ)に点火し、昼は煙をあげ夜は火炎を放って、先の烽へリレー式に伝達した。火炬は干した葦(あし)を芯(しん)にし、これに干し草や生柴(なましば)を巻いて縛り付け、松明(たいまつ)を差し込んでつくられ、状況によって炬数が規定されていた。こうした伝達方式は中世でも多く薪木を用いて行われたが、古来、点火の際にオオカミなどの糞(ふん)を加えると煙が直上するといわれ、狼煙(ろうえん)、狼烟(ろういん)の名がある。やがて戦国時代から近世にかけ、火薬の術の発達により花火を打ち上げたり、忍者の携行する小型のものも考案された。
[渡邉一郎]