飛火(読み)トビヒ

デジタル大辞泉 「飛火」の意味・読み・例文・類語

とび‐ひ【飛(び)火】

[名](スル)
火の粉が飛び散ること。また、その火の粉。
火事のとき、火の粉が飛んで離れた場所に燃えうつること。また、燃えうつったその火。「風下飛び火する」
事件影響などが、無関係と思われるようなところにまで広がること。「汚職事件が各方面飛び火する」
小児に多い伝染性の皮膚病ぶどう球菌連鎖球菌などの化膿かのう菌によって感染する。伝染性膿痂疹のうかしん
[類語](2延焼類焼もらい火火事火災火難出火失火炎上大火小火ぼや小火しょうか自火近火急火怪火不審祝融しゅくゆう回禄かいろく大火災大火事山火事火の海焼失焼亡焼尽丸焼け半焼け全焼半焼火元火の元引火猛火火の手下火鎮火消火火消し消防火事場焼け跡

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「飛火」の意味・読み・例文・類語

とび‐ひ【飛火】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 火の粉が飛び散ること。また、その火の粉。〔字鏡集(1245)〕
    1. [初出の実例]「焔は天を焦し、飛び火は八方に散る」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉四)
  3. 火災のとき、火の粉が飛んで、離れた場所に燃えうつること。
    1. [初出の実例]「見付を越して両国へ飛火致し」(出典:塩原多助一代記(1885)〈三遊亭円朝〉四)
  4. 事件などが、関係がないと思われていた人や所に及ぶこと。また、病気などが体の他の部分に移ること。
    1. [初出の実例]「仏蘭西(フランス)の二月革命から飛火(トビヒ)した伯林(ベルリン)暴動に対するその態度が」(出典:茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉独逸帝国の予言)
  5. 伝染性膿痂疹または水疱性膿痂疹の俗称。夏季に小児に好発し、皮膚の不潔、湿疹・あせもなどが誘因となって、皮膚上に水ぶくれや発疹などを生じる。主に黄色ブドウ球菌によって起こるもので、この菌が健康な皮膚につくと、他の箇所にも他人にも伝染するので、この名がある。
    1. [初出の実例]「陽春院之茶々飛火四十日計被相煩云々」(出典:言継卿記‐永祿一二年(1569)五月一〇日)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「飛火」の意味・わかりやすい解説

飛火 (とびひ)
bullous impetigo

化膿菌とくに黄色ブドウ球菌の感染による膿皮症の一種。高温多湿の季節に,おもに乳幼児にみられ,水泡性膿痂疹または伝染性膿痂疹ともよばれる。顔面軀幹,四肢など全身の一見健康な皮膚面に,突然大小いろいろな水泡がつぎつぎに生じ,すぐに破れて糜爛(びらん)面となり痂皮(かさぶた)がつく。新生児剝脱(はくだつ)性皮膚炎,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群などは飛火の重症型と考えられている。虫刺症,汗疹あせも),湿疹性病変を搔破(かきこわすこと)して生じた傷に原因菌が感染して始まることが多い。抗生物質の内服と外用を十分に行えば短期間で治癒する。治療と予防には環境の改善がたいせつであり,クーラーなどを使用して快適な生活を営み,同時に皮膚を清潔にし,病変部にさわらないように注意する。したがって,病変があっても,ふろは禁じられるがシャワーは用いて支障なく,その後で外用抗生物質を用いるようにする。なお,まれに腎炎を併発することがある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「飛火」の意味・わかりやすい解説

飛火
ひか

煽火」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android