日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイパガミー」の意味・わかりやすい解説
ハイパガミー
はいぱがみー
hypergamy
女性が自分の両親よりも高い社会的地位にある男性と結婚する通婚上の慣行をさす用語。ハイポガミーhypogamyとともに不等婚anisogamyを形成する。上昇婚とも訳される。夫の社会的地位を高くみるハイパガミーは、男性優位思想の強い父系社会に広くみられる慣行である。ハイパガミーがみられる社会には生まれながらに決定する身分制度があることが多い。ただし、非世襲的な経済的階級間でのハイパガミーもあるから、生得的身分をハイパガミーの前提とするのは不正確である。また男性優位思想がとくに強い文化では、通姻関係成立以前の社会的地位には直接関係なく、妻側の両親およびその一族の地位を夫側のそれらより低くみる傾向がある。この傾向とハイパガミーの境界が不明確なことにも注意すべきである。ハイパガミーのある社会の上層では、女性が結婚相手をみつけにくく、少数の結婚できる男性を夫とする一夫多妻傾向を生じやすく、さらに女子がその両親の地位より低い地位の男性と結婚して、女子の両親の地位がより低いその男性の地位よりさらに低く評価される事態を回避する目的で、新生女児の一部を間引きするなどの慣行があることが多かった。
[佐々木明]