改訂新版 世界大百科事典 「ハットゥシリ3世」の意味・わかりやすい解説
ハットゥシリ[3世]
Hattusili Ⅲ
生没年:?-前1250ころ
ヒッタイト新王国の第10代の王。在位,前1275ころ-前1250年ころ。兄ムワタリ王の没(前1282ころ)後は,その子ウルヒテスプが王位にあったが,すぐれた武将として声望もあり,広大な所領をもつ叔父ハットゥシリと,その野心を疑う若い甥ウルヒテスプとの間の争いとなり,ハットゥシリは実力をもって王位を奪って,ウルヒテスプはシリアの属国ヌハセの小王におとされた。やがて前1269年ころ,久しい以前からシリアの覇権を争っていたヒッタイト,エジプト両国の間に,両国王ハットゥシリ3世とラメセス2世による永久平和条約が結ばれた。この条約は,両国語による原文が双方の国それぞれに,今日まで元の形で残っていた世界最古の平和条約であろう。
執筆者:岸本 通夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報