日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナバチ」の意味・わかりやすい解説
ハナバチ
はなばち / 花蜂
bee
昆虫綱膜翅(まくし)目ハナバチ上科(ミツバチ上科)Apoideaに属する昆虫の総称。膜翅目の昆虫(一般にハチ類)のなかでもっとも進化したグループである。体長は5~25ミリメートルくらいまでで、一般に10~15ミリメートル。体毛の1本1本は密に枝分れしているのが大きな特徴の一つで、花粉が毛につきやすい構造になっている。成虫(雌バチ)は花から花へと飛び回り、花粉と花蜜(かみつ)を採取して巣に運び、これを混ぜ合わせて団子をつくり、幼虫の食糧として貯蔵する。花粉は、これを後脚(こうきゃく)につけて運ぶ種類がもっとも多く(たとえば、ヒメハナバチ、コハナバチ、クマバチ、マルハナバチ、ミツバチほか)、腹面の毛につけて運ぶもの(ハキリバチ、ツツハナバチなどのハキリバチ科)や花粉を食べて花蜜とともに腹中にため込んで巣に持ち帰るもの(たとえば、ハラツヤハナバチ)などもいる。口器は花蜜を吸い上げるのに適した構造となり、進化したハナバチは舌(した)が長い。
巣はおもに地中につくられるが(ヒメハナバチ、コハナバチ、コシブトハナバチ、マルハナバチなど)、竹筒やカミキリムシなどがつくった穴などの、いわゆる地上孔筒(こうとう)につくるもの(ハラツヤハナバチ、ツツハナバチ、ハキリバチの一部など)や、固い木材に穴をあけるもの(クマバチ)、地上の隠れた空間を利用するもの(ミツバチ)など変化が多い。
ハナバチの幼虫は無脚、ウジムシ状である。巣中に保護されているので運動性に乏しい。ハナバチは孤独性、集団営巣性、亜社会性、社会性と多様な習性を示す。また、ほかのハナバチの巣に侵入して産卵する労働寄生バチ(たとえば、ヒメハナバチに寄生するキマダラハナバチ、コシブトハナバチに寄生するルリモンハナバチ、ハキリバチに寄生するトガリハナバチなど)もいる。
ハナバチは世界中に約2万種が知られ、9科に分類されている。日本には、約500種を産する。シタバチ科(ミツバチモドキ科を改称)Colletidaeは短舌(たんぜつ)で、秋に出現するコシタバチはセイタカアワダチソウを訪花する。ヒメハナバチ科Andrenidaeは春に多く、秋にも出現するが、高山では夏にみられる。コハナバチ科Halictidaeもヒメハナバチ同様に種類が多く、春から秋にかけて出現する。ハキリバチ科Megachilidaeは春に少なく、夏から秋に多く、マメ科植物の花を好む。マメコバチは東北地方その他でリンゴの花粉媒介に利用され、その増殖法も確立されている。コシブトハナバチ科(ケブカハナバチ科を改称)Anthophoridaeは秋に多いが、クマバチやツヤハナバチのように春先からみられるものもある。ミツバチ科Apidaeのミツバチやマルハナバチはとくに有名な昆虫である。熱帯産のハリナシバチ(無針バチ)も社会性昆虫として著名である。
[平嶋義宏]