団子(読み)だんご

精選版 日本国語大辞典 「団子」の意味・読み・例文・類語

だん‐ご【団子】

〘名〙
① 穀物の粉を水でこねて小さく丸め、蒸し、またはゆでたもの。醤油の付焼にしたり、あん、きな粉などをつけたりして食べる。
※米沢本沙石集(1283)五本「せなかの上くぼみたるゆへにたにといふべくは、団子もくぼみたり」
② (①が丸いところから転じて) 人の言行が角ばらないこと。うまくその場をおさめること。うまく丸めこむこと。
洒落本・太平楽巻物(1782)「ながふいへばどふやら団子(ダンゴ)らしいが、あったら器量をもちながら、さりとはいやしいおまへの商売」
③ (形動) くちゃくちゃとひとところにかさなっていること、かたまっていること。また、そのさま。
④ 弾丸。銃弾。
⑤ 囲碁で、一方の石が一か所に凝集させられて、働きのない形。絞られた場合などによくできるまずい形。
[語誌](①について) (1)中国の北宋末の汴京の風俗を写した「東京夢華録」の、夜店や市街で売っている食べ物の記録に「団子」が見え、これが日本に伝えられた可能性がある。
(2)「伊京集」にはダンゴ・ダンスの両形が見られ、そのダンスは唐音の形と思われる。
(3)中世まではもっぱら貴族僧侶の点心として食されたが、近世になると、都会中心に庶民の軽食としてもてはやされるようになった。

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デジタル大辞泉 「団子」の意味・読み・例文・類語

だん‐ご【団子】

米や雑穀の粉をこねて丸め、蒸したりゆでたりしたもの。あん・きな粉をまぶしたり、焼いて醤油をつけたりして食べる。「花より団子」「きび団子
1のように丸いもの。また、ひとかたまりになったもの。「ひき肉団子にする」「走者がゴール直前で団子になる」
[類語]串団子みたらし団子彼岸団子きび団子

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「団子」の意味・わかりやすい解説

団子
だんご

米、麦あるいは蕎麦(そば)、粟(あわ)、黍(きび)など穀類の粉をこねて丸め、蒸しまたはゆでたもの。しょうゆのつけ焼きにしたり、きな粉や餡(あん)、またごまやくるみのたれをつけて食べる。餡を中に包み、表面にごまやきな粉をまぶす例もある。

 団子の語源については、(1)団喜(だんぎ)の転、(2)粉を練り団(あつめ)たもの(団は聚(しゅう)・集の義)、(3)形が丸いところから(団は丸いの義)、などの説がある。団喜は古代に中国から伝来した8種の唐菓子(とうがし)の一つで、『和名抄(わみょうしょう)』ではこれを歓喜団(かんぎだん)の別名としている。歓喜団(歓喜丸とも)は経典にもみえる菓子で、仏教の守護神である歓喜天(聖天(しょうてん))に供えるところからこの名がある。『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(1830成立)には「団喜は俗に団子というものの形にてあんを包める」とあるが、その形状は、巾着(きんちゃく)形で上部は八つのひだが広がった形となっている。生地(きじ)は米粉を水で練り、薄く伸ばして型抜きで丸く打ち抜き、小豆(あずき)のさらし餡を包んで形を整えてごま油で揚げる。さらし餡には、丁子(ちょうじ)、ごま、桂心(けいしん)、白檀(びゃくだん)、肉桂(にっけい)、甘草(かんぞう)末など不老強精の素材が混入されたが、現在では単純なさらし餡となっている。

 しかし、食物に限らず物を丸めることはごく自然な作業であり、団子の原形をあえて団喜に求める必要はないのかもしれない。『物類称呼』(1775成立)によれば、伊勢(いせ)(三重県)では団子を「おまり」(御鞠)、群馬地方では月見団子を「おまる」といった。いずれもその形状によるものである。また、女房詞(ことば)で団子のことを「いしいし」といったが、これは「美(い)し」を重ねた語で、おいしいものの意であり、各地の方言にも同じ語があった。

 団子は古くから常食として用いられたが、節供などの物日(ものび)につくることが多かった。餅(もち)はめでたいときに、団子は仏事などにとする所もあるが、この傾向は全国的ではない。慣習と団子のつながりからいえば、正月の二十日(はつか)団子、春秋の彼岸団子、春の花見団子、秋の月見団子、死者の枕頭(ちんとう)や墓前に供えた枕(まくら)団子などがある。このうち彼岸や仏生会(ぶっしょうえ)などにはよもぎ団子がつくられた。名刹(めいさつ)の門前土産(みやげ)に草団子を多くみかけるのは、そうした慣習の名残(なごり)である。月見団子や枕団子は餡やきな粉を用いない素(しろ)団子である。

[沢 史生

名物団子

『宗長(そうちょう)日記』の大永(たいえい)4年(1524)6月に、駿河(するが)国(静岡県)宇津の山の茶店では昔から十団子が名物と記されている。また寛永(かんえい)年間(1624~1644)成立の『毛吹草(けふきぐさ)』には、京都の七条編笠(あみがさ)団子、御手洗(みたらし)団子、稲荷(いなり)染団子、摂津(大阪府)の住吉御祓(おはらい)団子、近江(おうみ)(滋賀県)の柳団子があり、1787年(天明7)刊の『江戸町中喰物(くいもの)重宝記』は、さらしな団子、おかめ団子、よしの団子などをあげている。今日の名物としては、熊本の彦(ひこ)しゃん団子、岡山の吉備(きび)団子、京都・高山のみたらし団子、宇治の茶団子、新潟の笹(ささ)団子、東京では向島(むこうじま)の言問(こととい)団子、日暮里(にっぽり)の羽二重(はぶたえ)団子、柴又(しばまた)の草団子などが有名。また木曽(きそ)・東濃地方には御幣餅(ごへいもち)の一種の団子御幣があり、いずれも庶民の菓子として親しまれている。

[沢 史生]


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改訂新版 世界大百科事典 「団子」の意味・わかりやすい解説

団子 (だんご)

穀粉を水でこねて小さくまるめ,ゆでたり蒸したりしたもの。餡(あん)やきな粉をまぶしたり,しょうゆ味のたれの付け焼きにしてたべる。だんごの来歴には諸説があって明らかでない。ただし,平安時代に行われていた唐菓子の一種に団喜(だんき)というのがあり,日本最古の料理書とされる《厨事類記(ちゆうじるいき)》を見ると,団喜は今のだんごとよく似たものだったようである。また,《拾芥抄(しゆうがいしよう)》には〈団子(だんす)〉というのが八種唐菓子の中に名を連ねている。〈団子〉の語は《新猿楽記》に見え,おそらくこれが初見と思われるが,室町期には多く見られるようになり,〈団粉〉とも書かれた。やがて各地に名物だんごが現れてくるが,連歌師宗長(そうちよう)が昔から有名だとしている東海道宇津谷(うつのや)峠の十だんごや京都の御手洗(みたらし)だんごがそのはしりともいうべきものであった。

 だんごの名はまるい形から起こったが,平たくした場合には,草餅,柏餅など餅と呼ぶことが多い。また,餅は祝儀のもの,だんごは仏事のものとされることが多いが,これは死者に供えるまくらだんごや彼岸だんごの風習に根ざす感覚で,はっきりした区別はない。だんごは物日につくることが多いが,同時に粒食に適さぬくず米や雑穀の粉を用いて主食や補食として常用してきた地域もまれではなく,各地に土穂(つちほ)だんご,しいなだんごなどのことばが伝えられている。
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百科事典マイペディア 「団子」の意味・わかりやすい解説

団子【だんご】

穀類の粉を水でこねて丸めて蒸したりゆでたりしたもの。餡(あん)や黄粉(きなこ)をまぶしたり串(くし)に刺して焼く。本来は神仏の供物で,彼岸団子,死者の枕(まくら)団子など特に仏事に用いることが多い。年中行事には正月の二十日団子,十五夜の月見団子などがある。地方名物も多く,京都賀茂御祖神社のみたらし団子,東京隅田川堤の言問(こととい)団子,岡山の吉備(きび)団子などが有名。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「団子」の意味・わかりやすい解説

団子
だんご

餅加工品の一種。もち米,うるち米を主とし,ときにはとうもろこし粉,小麦粉,あるいはじゃがいもなどのデンプンを丸めて蒸したもの。多くの場合竹の串に刺し,あんや黄粉をまぶし,また焼いて醤油をつけて食べる。もとは唐菓子の「団喜」に由来したもので,仏の供物であった。各地に名物団子がある。

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「団子」の解説

だんご【団子】

穀類の粉をこねて小さく丸め、蒸したりゆでたりしたもの。あずきあん、きな粉、砂糖じょうゆのたれなどをからめた和菓子をいうことが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の団子の言及

【だんご(団子)】より

…ただし,平安時代に行われていた唐菓子の一種に団喜(だんき)というのがあり,日本最古の料理書とされる《厨事類記(ちゆうじるいき)》を見ると,団喜は今のだんごとよく似たものだったようである。また,《拾芥抄(しゆうがいしよう)》には〈団子(だんす)〉というのが八種唐菓子の中に名を連ねている。〈団子〉の語は《新猿楽記》に見え,おそらくこれが初見と思われるが,室町期には多く見られるようになり,〈団粉〉とも書かれた。…

※「団子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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