バイヤー=ビリガー反応(読み)バイヤービリガーはんのう(英語表記)Baeyer-Villiger reaction

改訂新版 世界大百科事典 「バイヤー=ビリガー反応」の意味・わかりやすい解説

バイヤー=ビリガー反応 (バイヤービリガーはんのう)
Baeyer-Villiger reaction

ケトンと過酸との反応によりエステルが生成する反応。1899年J.F.W.A.vonバイヤーとV.ビリガーにより発見された。たとえば式(1)に示すように,シクロヘキシルメチルケトンをm-クロロ過安息香酸と反応させると,酢酸シクロヘキシルとm-クロロ安息香酸が生成する。



一般に,ケトンR1COR2は過酸RCO3Hと反応して,式(2)に示すような反応経路を通ってエステルR1COOR2となる。



このとき,中間体においてR1またはR2酸素転位するが(式(2)ではR2が転位する機構が示してある),転位のしやすさは,第三級アルキル基(R2)>第二級アルキル基(R1)>第一級アルキル基(R)の順に減少する。式(3)に示す反応は,生理活性物質であるプロスタグランジンの全合成の途中で使われたバイヤー=ビリガー反応であり,この場合にも第二級アルキル基だけが選択的に転位し,環式ケトンであるためラクトン環を生成する。

この反応は有機合成上きわめて重要な反応として知られている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「バイヤー=ビリガー反応」の解説

バイヤー-ビリガー反応
バイヤービリガーハンノウ
Baeyer-Villiger reaction

バイヤー-ビリガー転位ともいう.ケトンをペルオキソ酸または有機過酸で酸化すると,酸化と同時に転位が起こりエステルを生成する反応.

転位はメチル基でもっとも起こりにくく,電子供与基をもつフェニル基や,かさ高いアルキル基などで起こりやすい.環状ケトンからはラクトンを生じる.

α,β-不飽和ケトンからはエノールエステルが生じ,アルデヒドの合成に利用される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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