プロスタグランジン(読み)ぷろすたぐらんじん(英語表記)prostaglandin

翻訳|prostaglandin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロスタグランジン」の意味・わかりやすい解説

プロスタグランジン
ぷろすたぐらんじん
prostaglandin

生体内で合成される生理活性物質で、炭素数20個の不飽和脂肪酸が骨組みとなっている。多くの種類があるが、組織中に存在し生理的に重要なものはプロスタグランジンE1、E2、F2α、I2、D2、H2、G2などであり、これらの誘導体で不安定ではあるが強力な生物活性をもつトロンボキサンプロスタサイクリンなども含まれる。この物質の存在は、子宮収縮作用をもつことによって1930年ごろから注目され、1935年スウェーデンフォンオイラーによって、それまでに知られていない物質であることがわかり、精液に多いことから前立腺(せん)prostate glandにちなんで名づけられた。しかしその後、この物質は精嚢(せいのう)腺でつくられることがわかり、1950年代にスウェーデンのベルイストロームが単離、結晶化に成功し、化学構造を明らかにした。プロスタグランジンは多くの組織で微量ずつつくられるが、肺で破壊される。おもな作用は、子宮血管気管などの平滑筋に対するもの、血小板凝集低下、胃酸分泌の低下などであるが、これらを利用して降圧剤、抗喘息(ぜんそく)剤、抗潰瘍(かいよう)剤、陣痛促進剤、血管系疾患に対する治療・予防薬に使用されている。

[大岡 宏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロスタグランジン」の意味・わかりやすい解説

プロスタグランジン
prostaglandin

動物組織中の生理活性物質で,最初に人間の前立腺 (プロスタータ) が分泌部位として注目されたので,このように命名された。微量 (組織 1gあたり1/1000~1/100万 mg) であるが,分布は広く,また十数種の異なる類似物質が知られている。炭素五員環から,炭素7~8個の2本の鎖が伸び出た形の分子である。生理作用は子宮筋収縮,血管拡張,血圧降下,腸管収縮など,多彩にわたる。一種のホルモンともみられるが,他の多くのホルモンが細胞内にサイクリック AMP(cAMP)の増量を介して作用するのに対して,逆に cAMPレベルを低下させる。

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