改訂新版 世界大百科事典 「バチカン図書館」の意味・わかりやすい解説
バチカン図書館 (バチカンとしょかん)
Biblioteca Apostolica Vaticana
〈バチカン文庫〉の名でも知られる,バチカン市国の図書館。同文庫の所蔵書の収集はおおむね15世紀にはじまるが,その起源は古く4世紀ころで,教皇ダマスス1世の創設したローマ宗教文書館に端を発し,当時の文書記録類を収蔵して7世紀におよんだ。1309年,教皇庁がフランスのアビニョンに移転したとき,ともにこれにしたがったが,ふたたびローマにかえり,そのころから〈バチカン文庫〉とよばれるようになった。この文庫を今日まで存続させたのは,愛書家として有名な教皇ニコラウス5世(在位1447-55)で,在職のあいだ図書の収集のためその権勢を利し,財力の限りをつくした。現在の蔵書数はおよそ書写本6.5万部,印刷本100万部,インクナブラ(初期刊本)8000部で,とくに著名な珍本にキケロの《共和政体論(国家論)》,4世紀ころのものと推定される聖書の《バチカン写本》,ウェルギリウスの4世紀,6世紀および7世紀の写本やテレンティウスの4世紀と9世紀の写本などがある。
執筆者:庄司 浅水
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報