改訂新版 世界大百科事典 「バルデスレアル」の意味・わかりやすい解説
バルデス・レアル
Juan de Valdés Leal
生没年:1622-90
スペインの画家。スペイン・バロック絵画において残酷なまでのレアリスムを代表する。セビリャに生まれ同市で没。ポルトガル人の銀細工師を父にもち,母方の姓を名のる。1660年ムリーリョとアカデミーを創設したが,性格,作品ともに両者は対照をなす。美よりも表現性を尊び,スペイン派に流れる〈勇猛な血脈〉を代表する一人。ルーベンスの影響を見せる《アッシジ城門前でのイスラム軍の敗北》(1653-54)等で,迅速なタッチ,優れた色彩感覚そして表現主義的な傾向によってゴヤの絵画に先駆する。油彩による宗教画を中心に版画,壁画にも作域を広げる。ドン・フアンの原型とされる偉大な慈善家マニャーラMiguel de Mañara(1626-79)の依頼でセビリャの慈善病院のために描いた《束の間の命In ictu oculi》と《世の栄光の終りFinis gloriae mundi》(1672)は,マニャーラの宗教思想に従い,死の実相を描き切った傑作。
執筆者:神吉 敬三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報