改訂新版 世界大百科事典 「パラメトリック増幅器」の意味・わかりやすい解説
パラメトリック増幅器 (パラメトリックぞうふくき)
parametric amplifier
マイクロ波帯の増幅を行う装置。印加電圧によって容量が変化する可変容量ダイオードなどの非線形リアクタンスをポンプと呼ばれる高周波fpで励振しておき,これにf1という,より低い周波数の信号を加えると,fpから加えた電力pはf1とfp-f1の二つの周波数にpf1/fpとp(fp-f1)/fpの割合で分配される。結局f1の信号にfpの電力が乗り移ったことになり,負性抵抗形の増幅作用をもつ。fp-f1の電力はアイドラーと呼ばれる共振回路で吸収する。負性抵抗形増幅器のため,サーキュレーターのような方向性結合器が必要。
リアクタンスは熱雑音を出さないため,パラメトリック増幅器はトランジスター増幅器に比べて低雑音で,衛星通信や電波望遠鏡などギガヘルツ帯の受信機の初段に用いられる。非冷却でもかなり低雑音であるが,微弱な電波の受信機では初段の装置を液体ヘリウムで冷却し,各部の熱雑音を最小にして使用する。
執筆者:柳沢 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報