改訂新版 世界大百科事典 「パレオパラドキシア」の意味・わかりやすい解説
パレオパラドキシア
Paleoparadoxia
中新世中期にいて絶滅した哺乳類の1属。ウシぐらいの大きさで水陸両生の生活をして,主として北太平洋の海岸地帯にいたものと思われ,現在のところ1種P.tabataiが知られる。日本および北アメリカ西海岸の各地で化石が発見されているが,岐阜県土岐市,埼玉県秩父市,カリフォルニアのスタンフォード大学構内では全骨格が発掘され,岡山県津山市でもまとまった骨格が発見されている。頭骨は低平,がんじょうな四肢骨はからだの側方へのび,胸に板状の胸骨が発達するのが特徴で,臼歯も特異な形をしている。デスモスチルスとともに束柱目をつくるが,デスモスチルスと違って,きば状でなく,へら状の切歯があり,低歯冠で歯根の長い臼歯をもち,特殊化はあまり進んでいない。マングローブ林のあるような温暖な浅海域の海岸地帯にすみ,遊泳したり,陸を歩いたりしていたと思われる。学名はギリシア語の〈古代の〉という意味のパライオスpalaiosと,〈奇妙な〉とか〈予想とはちがった〉という意味のパラドクソスparadoxosとに由来。
執筆者:亀井 節夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報